短編

□孤高に咲く花
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ややこしい設定

男女が逆転した世界という感じで。遊郭の決まりごとは一切省いてます。

アナタはどこかのお金持ちの領主様。
仁王が遊女になっちゃってます。赤也くんも出てきたりします。
















「お待たせしました。白薔薇でございます。」



「白薔薇、……………ねぇ?随分酔狂な名前じゃないかい?」




「ワタクシの髪色を見て皆が指差し申すので。」





入り口で三つ指をついたまま顔を上げて口角を吊り上げて目の前の男は笑った。

男に見えない艶やかさに、自分がいささか負けている気がするが、ここは買った女と変われた男の場所。

いくら女物の着物を乱していて(男だから容赦なく肩まで出せるからか。)
紅を引いていても男は男だ。






「堅苦しい。敬語はなしだ。そしてもっと近くに寄れ。」


「ほぉー………じゃぁ、遠慮なく。」




そのまま、裾を軽く持って立ち上がって私の隣にやって来た。

興味は尽きなかったが、それを反対に私は片腕を窓の外に出して煙管を吸っていた。





「ずいぶんと方言が強いな。地方の国出身か?」

「そんなもんじゃ。」




視線を外に逸らせていたのを、顎を持たれ強制的に彼に戻される。

じっと見られていると、穴が開きそうなくらい、強い 視線だ。





「そんなに煙管ばっか吸っちょったら、肺が腐るぜよ。」



「口寂しいんでな。ならお前が満たしてくれるのか?」


「そうじゃのぉ、最高級の酒を出してやるぜよ。…………赤也。」






そう呼びかけると、彼の付きであろう禿が入ってきた。

これもまた男で、頭がもじゃもじゃだ。







「可愛い奴だな。ちょっとこっちに来い。」



「……………なんッ…スか……?」





頑張って一つにまとめたであろう髪の上を、ぽんと一撫でして下らせた。
うん。さわり心地がいい。


たまたまポケットに入っていた菓子をあげて、私が満足そうに微笑むと、赤也と呼ばれた禿もニッコリと笑って帰っていった。



といっても、きっとこの部屋の外で待機してるんだろうけど。








「でー、俺にはかまってくれんのかのぉ?」





自分よりも体格のいい彼が私の胸の中というか、私の外に出ている方の片腕を肩に回して(いつのまにか煙管は奪われて、代わりに反対の手に猪口がのっていた。)

半分体を乗せるような形で徳利から酒を出す。

くいっと一杯のんだあとに
彼の髪に私の顔を埋める。



申し訳程度に髪を簪でまとめているが(まぁ、それも豪華な方だろうが)

上の方は何もついていないので、ふわふわのままだ。





きもちがいい。









「どーしたんじゃ?」


「なんでもない。ただ、少しこのままでもいいかと思ってな。」




しばらく彼は黙ったかと思うと、私の腰に手を回してきて、だんだんとその手を上へ、私の胸の近くへと当てた。




「のぉ、俺、お前さんのことがもっと知りたいんじゃけど………。」



「へぇー。なら、もういっぱい酒を酌んでくれないか。」


「お安い御用じゃ。」




酒を酌む彼の髪を再び見ると、確かに白薔薇のように美しいと思ったが、

彼自身は白薔薇とはかけ離れた存在で

自分を刈り取ろうとする者はするどい棘で痛めつけ、そこからきっと毒を流し、相手を虜にする、猛毒を持つ別の花なのだろう。






「のぉ…………」



色っぽい目線と上目遣いで私に視線を送る。


こんな男にドキリとしてしまう自分は間違っているのだろうか。




「あぁ、行こうか。」







白薔薇の花言葉は、純潔。


彼に言葉を当てるとするならば、猛毒。
この男は純潔なんて言葉とは、いろんな意味でかけ離れすぎている。






fin








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