頂き物

□水の中に溶けた記憶
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「ぶえっくしょい!!」

地上より遥か離れた上空で、良守は盛大にくしゃみをした。
「さぶい〜〜〜;」
「当たり前だ。雪が降ってるんだから」
「なんでお前はそんなに平然としてられるんだよ〜!信じらんねぇ・・・;」
「五重も結界を張っておきながら未だに『寒い』と叫んでいるお前の方が信じられん」
見れば確かに、良守の周囲には蒼白い結界が分厚くびっしりと張られている。
全て“対寒風用結界”なのだが、それでも良守は寒いらしい。
一方限は普段着のまま平然と座っているものだから、見ていて凄く寒々しい。
「お前、今からそんなんだと目的地に着いたら大変だぞ?」
「ああ?」
「目的地は周囲を山に囲まれた小さな村。夜には氷点下になる事も稀ではないらしい」
「げっ!マジかよ!?カイロもっとたくさん持ってくるんだった〜!!」
良守が抱えているリュックサックには、結界師装束以外全てカイロがぎっしりと詰め込まれている。
ここまで寒がりというのもどうなんだろうと、限は静かに溜め息を吐いた。
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