□愚者の恋心
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「桐条さん、順番来たみたいですよ?」



そう言って桐条さんの手を取って観覧車に乗り込む。


「あ、あぁ。」



手を握っただけなのにまた顔を真っ赤に染める桐条さん。




自分では解らないが僕も顔を赤くしていると思う。




観覧車から見えるパノラマは壮大だった。
ミニカーのように見える車、深い藍色の絵具を敷き詰めたような海、普段見ている物が全く違う物に見えていた




それを先ほどまで悲しい顔をしていた桐条さんが硝子玉のような眼をキラキラさせながら「すごいな」とか「エクセレント」だとか言ってる。




桐条さんは極端な二面性を持った人だと思う。
大人の部分と子供の部分、強い部分と弱い部分。





その極端なギャップは僕を飽きさせない。





僕は桐条さんに惹かれている、それを初めて自覚していた。





「遊園地に来るのは初めてなんだ。」



桐条さんが遠くを見て言葉を漏らした。




「そうですか。」



僕は相づちを打つ。




「幼い頃憧れていた、遊園地に行く事を。でもお父様は多忙だった…だから今日君達と来れて嬉しい、ありがとう。」




慈愛に溢れた笑顔で僕に礼を言う桐条さん。




「また、来ましょう。僕でいいならいつでも付き合いますから。今度は二人で来たいです。」




「ふっ二人で!?」




「冗談です。」




先輩をからかうんじゃないっと言いながら頭を小突かれた。



二人で笑い合い話をしていると空がパッと光った。


「あっ!花火。」





ちょうど遊園地でナイトパレードを催しているらしく花火が打ち上げられていた



「今度は二人で来たいものだな…」




よく聞こえなかった。




「何か言いました?」



「なっ!何でもない!」




桐条さんは慌てた様子で会話を終わらせた。



その後皆と合流して帰路についている途中、桐条さんは上機嫌だった。





恋愛なんて興味無いと思ってた。
桐条さんに逢うまでは。





今は貴女の弱さ、強さ、その全てに惹かれている。





愚者の僕に芽生えた恋心、しばらく消えてくれそうにない。






END
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