文
□雨。
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今日は雨が降っている。
雨は嫌いだ。
濡らして僕の体温を奪っていくのに優しく包み込む優しさみたいなニュアンスを含んでいるから。
だから嫌い。
両親が死んでからずっと独りだったから優しくされることには馴れてないんだ。
そんなこと思いながら外を見ていたら聞き覚えのある優しい声が聞こえた。
「あっ!哲哉君今帰り?」
風花だ。
僕はこの子が苦手だ。だって雨より優しくて雨みたいに僕の体温を奪わないから
それに風花が一緒だと何だそわそわして胸が締め付けられる感じがする。
だから雨より風花が嫌い。
「うん。山岸も今帰り?」
「そうなんだけど傘忘れちゃったの…。」
「そっか。僕も傘持ってきてないんだ。」
そんな社交辞令みたいな会話をしていたら風花が図書室で雨宿りしなかと提案してきたのでその提案にのることにした。
随分いろんな事を話したような気がする。
僕はたいして人と関わる人間じゃないから誰かと話すことがこんなに楽しいことだという事を初めて知った
順平や友近と話しててもこんなに楽しいなんて思ったこともないのに苦手な風花と話してると面白いと思うなんて不思議だな。なんて事を思っていた。
僕はこの子が本当に苦手なんだろうか?
だいぶ時間も経ったのか外の雨もすっかり止んでいた
「雨止んじゃったな。」
率直な感想だ。
本当はもっと降っていて欲しかった。
「楽しかった。またお話したいな」
「僕も。」
「哲哉君、私のこと避けてると思ってたから今日はお話できてよかった。」
何だ。苦手なのばれてたんだ…。
前言撤回。
僕は雨が嫌いでも風花は嫌いじゃない。
いや。
僕は風花が好きかもしれない。
end