文
□言葉。
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こうして美鶴の部屋で休日を過ごすのはもう何度目だろうか?
付き合い始めてからは日曜は美鶴の部屋に居ることが多い。
「哲哉」
「何?」
付き合うようになって僕達は名前で呼び合うようになっていた。
「もっと寄っていいか?」
「どうぞ。」
美鶴からこう言ってくれるようになったのはつい最近
彼女はシャイだから。
まぁ、そういう所が好きなんだけど。
ソファーに二人寄り添って座ってる。
彼女の手をそっと握ると彼女は顔を朱に染めて頭を僕の肩に乗せてくる。
シャンプーのいい香りが僕を柔らかく優しく包んでくれるような感覚。
何だかふわふわして空間が存在しないみたい。
世界には美鶴と僕の二人だけそんな感覚。
「愛しているよ。」
美鶴の言葉が空気を振らして僕の耳に届く。
そして心に響く。
「僕も愛してる。」
僕の言葉は美鶴の心に届いたかな?
そんな杞憂を弄んでいると彼女からキスをしてきた。
あぁ、届いてた。美鶴の心に僕の声と心が届いてた。
言葉は易いと思ってた。
だって言葉は幾らでも出てくるから。
でも、今二人の間で交わした言葉は易くない。
美鶴にじゃなきゃ云えないから
僕じゃなきゃ聴けないから
いつまでも、この言葉に酔いしれて僕と彼女は繋がっている。
end