□支え合う関係
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週末に僕は美鶴を誘い映画館に来た。



上映していた映画は陳腐なラブストーリー、恋人が病気で死んだ女が新しい恋をして立ち直るお話。



映画も終わり、喫茶店で映画の感想をふたりで言い合っていた。



美鶴は頻りにさっきの映画を褒め称えている。



強く取り繕っていてもやはり女の子、ラブストーリーには弱いみたいだ。




美鶴の可愛いギャップを観察しながら僕は何時もどうりに無表情で彼女の話しに耳を傾けていた。




「どうして、彼女は彼に恋をしたのだろうか?」




さっきの映画の話しだ。




才色兼備な彼氏が死んで落ち込んでいた女が次に恋したのは何の取り柄のない不器用な男。




「僕も分かりません。」



僕も解らない、何故女があの不器用男を愛したのか…



そう言うと美鶴は「うーん」とか言って腕を組み考え込んでしまった。



僕も考えてみる。あの男の良さ、あの女の心理を分析して僕の頭のなかで弾き出された答えは…




解りません…。





あの男の何処が良いんだ?不器用で口下手な映画の男


「あの、気付かないような優しさは評価できるが…」

美鶴が独り言のように言葉を漏らした。


気付かないような優しさ?




そうだ。あの男は解りにくい優しさを何時も女に示していた。





見返りを求めず、気負いさせない為、気付かないように優しさを。



女が自分の力で立ち上がれるように。




辛い時、誰かに優しくされれば人はそれに依存する。依存した人は依存した瞬間から優しくしてくれた人無しには生きていけない。





そうさせない為にあの男は気付かない様な優しさを女に与えてた。




女が自分の力で立ち上がり、倒れそうになったら支える。



あくまで支えるだけ、無理に立ち上がらせようとはしない。




自分の中で答えが出て満足していると美鶴が「そうか」と言って僕と同じ答えを嬉しそうに話しだした。



「私達もそうなりたいものだな。」



「そうだね…。」




僕には美鶴はそうなってるよ。



そんな台詞が浮かんだか直ぐに引っ込めた。



言葉じゃなくて態度でしめしたかったから。



「映画観に来て良かったね」


「あぁ、また連れてきてくれ。」




それから暫く話し込んで僕達は帰宅した。





帰り道、僕と美鶴は自然と手を繋いでいた。






end

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