文
□タイトロープ
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彼の傍にいると、ただ息をするだけで苦しくなる。
呼吸器官は犯されて、私の中の私が私にそっと耳打ち
「彼に身を任せてしまえ」
桐条グループ、影時間、シャドウとの闘い全てを忘れて彼の中へと堕ちてしまいたい。
事実それが出来たらどんなにいいのだろう。
しかし、全てを捨てて彼に溺れる程の勇気が私にはなかった。
彼と桐条家との間に一本のロープがピンっと張り詰めている。
私はその真ん中で右往左往しながら終を待っている。
この綱渡り、私はどちら側に渡るのだろうか?
或いは落ちるのだろうか?
恐い。
ただただ恐い。
落ちた先に彼はいるだろうか?
私を受け止めてくれるだろうか?
今はただただ恐いだけ。
end