私と貴方【第二章】
□番外篇 ‐美女と野獣‐
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「あ、有難うございました…!」
「ぁあ゛?」
とき子の前に現れたのは、刃こぼれの激しい刀を握った男だった。長い手足に伸びきった黒髪、鋭い目がとき子を睨み付ける。
「…助けて頂いて、有難うございました!」
とき子と男の間に血だらけで倒れた男三人――とき子を襲おうとしていた輩だ。とき子は乱れた衣服――ボロ布にしか見えない着物を整え、深々のお辞儀をした。
「助けた?…ハッ、勘違いしてンじゃねえよ。俺ァただ、コイツらが強いかどうか試しただけだ……てめえみてえな女には興味はねえ」
男はそう云うと、茂みに手を入れて桃色の髪をした赤ん坊を不器用に持ち上げた。赤ん坊は笑って男にしがみつく。
「あ、あの――…
とき子に背を向け、その場を立ち去ろうとする男を呼び止める。男は面倒臭そうに振り向いた。
…――お名前を、教えて下さい!」