長編

□霧雨
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病気というのは忘れた頃にやって来る。

***霧雨****


クシュッン―。


くしゃみが深い森に木霊する。


「先輩…風邪ですかぁ?」


くしゃみをしているデイダラの隣にいるトビが話し掛ける。


「うっ、うるせー…。」


―クシュッン。


「やっぱり風邪じゃないんですか?俺に移さないでくださいね。」


「テメェー、オイラがどうしてこんな事になったと思ってるんだテメェーのせいだろが…うん。」


実はさっきまでトビのノルマだった三尾の捕獲と封印をしていたのだ。


トビがヘマしたのを助けたがおかげで、デイダラは上から下までびしょ濡れになってしまったのだ。


「アレ?そうでしたっけ。」


自分が風邪を引かせたというのに相変わらずテンションの高いトビに遂にデイダラの堪忍袋の尾が切れた。


「トビいい加減にしろ、テメェが一人で三尾捕獲出来なかったせいだろーが…うん。」


「…あんまり怒ると体に悪いですよ、ハハハ…。」


ブチッ―…。


何かが切れる音…。


「って、冗談…ハハハ。」


「…褐!!」


ドーーン…!!


森に凄まじい爆発音が響く。


「ギアアァァ―…。」


デイダラの起爆粘土が炸裂した後、ようやく辺りは静かになった。


「先輩、酷いじゃあないですかぁ…。」


「フンッ、お前には良い薬だ…うん。」


そう言うとトビを置いてデイダラはサッサと先に進んで行ってしまった。


「先輩もう少し加減してくれても…って、待って下さいよぉ。」


そんなトビの叫びを全く無視してデイダラはどんどん先に進んでいく。


「先輩、そんなにさっきの事怒っているんですかぁ。」


「……。」


「先輩〜。」


走り寄って呼んでみても返事がない。


「……。」


「先輩聞いてるんですかぁ―!」


何度も呼んでも応答の無いデイダラに我慢出来ず、遂にトビはデイダラの腕を掴んだ。


「……!!」


明らかに体温がいつもよりも熱い。


「先輩、熱があるじゃないですか!?


「くっ……。」


その言葉を聞いて緊張の糸が切れたのか、デイダラはその場に座り込んだ。


「先輩―!?」


座り込んだデイダラをトビが支え上げた。


「早く病院へ行かないと、サッ…、行きましょう。」


「こんな熱、大した事…な…い…。」


「そんなコト言って、強がりは止めて下さい。」


嫌がるデイダラを無理矢理病院に連れて行こうとするが、その場に座り込んだデイダラはびくとも動かない。


「じゃあ責めて何処か宿でも探して、そこで体を休めた方が良いですよ。」


こんな森の中に何時までもいると体に良くない、病院に連れて行くのは無理でも責めて体を休ませなければ。


「…分かった。」


5分ほど経ってようやくデイダラがうなずいた。


「それじゃ…俺、近くに良さそうな宿が無いか探して来ますね。」


そう言って、トビはデイダラをその場に残して走去って行った。






―2時間後…。


「先輩、宿見つけて来ましたよ。行きましょうか…アレ?」


「先輩?寝てるんですか?」


トビが宿を探している間にいつの間にか寝てしまった様だ。


ジ〜ッ…。


う〜ん。


しかし先輩をこんな近くで見たの初めてだけど…、先輩ってよく見てみると女の子みたいで…可愛い。


「…って、何変な事考えてんだ。先輩は男なのに俺は…。」


でも、可愛いかも…。


「あ”ああぁぁー…、俺の馬鹿バカ…。」


「…トビ?」


頭の中が混乱していたせいか、眠っていた筈のデイダラはとっくに目が覚めて不思議そうにトビを見つめていた。


「あっ、すいません何かぼーっとしちゃて…どうしたんだろ俺、…ハハハ。」


「……?お前大丈夫かぁ…。」


「大丈夫です。」


大丈夫じゃないけど…。


「何かお前、顔赤い…風邪移ったのかぁ…うん。」


「ちっ…、違いますよ。」


もっと違う理由で…。


「……?」
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