長編
□霧雲
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窓から見える真っ青な蒼空は手を伸ばせば今にも届いてしまいそうだ。
++霧雲+++++
そんな事を考えながら、ベッドからデイダラはぼんやり窓の外を見ていた。
外からは町の活気に満ちた声が聞こえて来る。
「……暇だな、うん。」
そう呟いても誰からの返事はない…。
買出しに行くと言って部屋を出て行ったトビもまだ帰って来る気配は無い。
流石にベッドの上でジッとしているのも飽きてきた。
(…よし。)
意を決して、ベッドから体を起して窓から外を見下ろすと、宿の下は活気に満ちた町並が続いていた。
トビもまだ帰って来る気配はない。
熱も多少下がったようだし、気分転換に少し位外の町を散策してみるのもイイだろう。
デイダラはベッドから降りると、上着を羽織って部屋の鍵を閉めて歩きだした。
熱のせいか足下がフラフラする。
宿から一歩出ると眩しい光が飛び込んで来て思わず目を閉じてしまう…。
「結構活気のある町だな…うん。」
宿は大通り沿いにあるらしく、宿の前の道は沢山の人が行き交っていた。
大通りを歩いて行くと幾本も道が枝別れして狭い路地に通じていた。
その一本を曲がってみるとソコは大通りとは打って変わって下町の風景が広がっていた。
狭い路地を進んで行くと、突き当たりに大きな鳥居がある社が目に飛び込んできた。
「結構、芸術的な造りしてんじゃねぇか…うん。」
鳥居を潜ると、社の隣の大きな柏の木が立っていた。
「ほわぁー…。」
デイダラはしばらく柏の木の大きさに圧倒されて言葉を失ってしまった。
「こんな町中に…。」
樹齢は優に千年は超えているようだ…、その後もしばらく柏の木を見上げていた。
「まさに“壊し甲斐の有る木”だな…うん。」
(まぁ冗談だけどな、うん。)
辺りは静まり返っていてただ神社の柏の木の葉が揺れる音だけが微かに耳に入って来る……。
(……。)
「そろそろ宿に戻らないとな…うん。」
大きく深呼吸すると、デイダラは元来た道を辿って宿の方へと歩き出した…。
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空を見上げると真っ青な蒼空にぽつんと白い雲が浮かんでいる……。
〜霧風に続く〜