長編
□霧風
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+霧風+++
フゥッ―…。
部屋に帰ると、デイダラはベッドの上に倒れ込んだ…。
外に出て歩き回った事が祟ったのか熱が上がったようだ。
熱のせいで頭がぼっ〜とする…。
「少し無理し過ぎたみたいだな…うん。」
目を閉じると間髪入れずに夢の中へ引きずり込まれて行く…。
気が付くと、目の前は血の様な真赤な海が広がっていて空にも同じく大きな赤い満月が輝いていた…。
赤い世界は何処までも果てなく広がって終りがない様だ…。
赤い砂浜に赤髪の少年が立っている…。
自分が駆け寄っていくと…少年が振向いて、手を差し出してきて自分も手を伸し触れようととした途端……。
周りの景色が揺らいだかと思うと、急に足元に暗闇が広がって…あっ、と言う間に闇に落ちていった…。
誰かが自分の名前を呼ぶ声が聞こえて来る…。
「うっ…。」
瞼が重い…。
「先輩…、デイダラ先輩しっかりして下さい…。」
聞き慣れた声が聞こえる。
「ト…ビ…?」
目を開けると目の前にトビの顔があった。
「先輩大丈夫ですか…?熱にうなされていましたよ。」
「熱…。」
そういえば、自分は熱が出て横になっていたのだ…。
だとすると…さっきまでの出来事は全て夢だったのか…。
夢にしては随分とリアルな内容だった…、多分あの少年は蠍の旦那…。
死んだ筈の人が夢に…何だか不吉な予感がする…。
考え込んでいると額に冷たいタオルが置かれた。
「…!!ワッ!!」
「全くびっくりしましたよ…。俺が居ない間に熱が上がったんでしょうねぇ…。」
………。
「まさか、勝手に外に出たりなんてしてませんよね…。」
―ビクッ…。
(図星)
「ちゃんと寝てて下さいよ…もう、世話が掛かる先輩だなぁ…。」
「そんな事言える立場か?その言葉そっくり返すぞ…うん。普段はなぁ…」
(……。)
「…って、無視かコノヤロー!」
デイダラの説教を聞くのが嫌なのかトビはいつの間にか部屋を出て行ってしまった。
「…あの野郎、後で殺す。」
しばらくするとトビが何かを持って帰ってきた。
「トビ…テメェー何処に行ってたんだ、さっきは無視しやがって…うん。」
「別に無視なんてしてませんよ。」
「そのなめた態度がムカ…」
そう続けようとしたとたん口に何かが放り込まれた。
「何しやがる。」
「お粥ですけど…何か?」
モゴッ…。
はぁ?
デイダラが怒っているのもを無視してトビはどんどん口にお粥を突っ込んでいく。
「説教はあとあと、先ずは風邪を治さないと…お粥食べて下さいよ。」
「…、何かお前今日は態度デカくないか?うん」
「気のせいですよ…さっ、食べて下さいよ。」
デイダラはしぶしぶお粥を食べ始めた。
「そもそもこの粥は何処さら持ってきたんだ…うん?」
「宿の厨房を少し借りて俺が作りました♪」
「フーン…。」
少し感心…。
だがそんなことに感心するよりも…、今の状態に突っ込むところが…。
「なぁトビ…、この状態明らかにおかしいよなぁ…うん。」
「えっ!?何ですかぁ…?」
「だからぁ…、自分で飯位食べれるのにテメェーがどうして食べさせているんだよ…うん。」
「おかしですかねぇ?はい、ア〜ン。」
トビは全くデイダラの言うことを無視して相変わらずマイペースでいる。
「無視か…無視なのか?」
一々怒るのが面倒くなってきた。
食事が終わるとデイダラは目を閉じて、大きく深呼吸をした。
「怒ってたら、また熱が上がってきたな…うん。」
「すいません、何か俺のせいで状態悪化させてしまって…。」
「フンッ…。」
―沈黙……。
しばらくすると、トビが口を開いた。
「あの…先輩、恋ってしたことあります?」
「……。」
トビが話掛けても寝ているのか何の返答も無い。
しかし、トビは話を続けた。
「俺今までしたこと無かったんですけど、…ある人のことが頭から離れないんです。
始めは勘違いだと思っていたんですが…なかなか離れなくて。」
トビが話を続ける。