■花唄

□今と昔の記憶
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 それはある日の夏の夕方だった。
 白梟が料理人に頼んで作らせたと言う白くてプルプルしたものを僕に見せに来たのだ。 
 それを二人で大きな木の下で食べようという珍しい誘いを聞き、僕はすぐに頷いた。

 白梟は小さなスプーンでプルプルしたものをすくっては口に含んでいた。
 僕はというとその物体をじっと見つめるだけで含もうとしなかった。

「花白、食べないのですか?冷たくて美味しいですよ」

 優しく微笑む彼女を見て僕は嬉しくなった。スプーンを取り、物体を恐る恐る口に入れる。上にかかっていた黒蜜がプルプルしたものに合ってて美味しかった。美味しくて次々と口に含むものだから、それはあっという間に無くなってしまった。

 名前を聞くと、それは”寒天”だと教えてくれた。



……………………………

「白梟」
「玄冬…何故あなたが此処に?」
「花白の見舞いに来た」

 花白の部屋に入ろうと思ったら部屋から出てきた白梟に会った。

「……花白はまだ寝てます。熱は下がったようですが、顔色がまだ…」

 不安そうにする白梟を見て、俺は安心した。彼女がきちんと花白を愛してくれていると分かったからだ。

「大丈夫だろう。花白は強い。それに…」
「それに…?」

 先を促すように目を見つめてくる。

「あなたが今までついていてくれたから、すぐに元気になる」

 少し驚いた顔になったが、すぐに元に戻り、しかし嬉しそうに一言呟く。

「そうですか」

そして彼女は自分の部屋に帰って行った。
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