■花唄
□準備
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「おい、はなしろ」
「だめっ!!くろとは下ね!」
「…はなしろは背が低いから下だ」
「やだ!!大丈夫だもん!!」
というわけで、俺、くろと(小)は今、はなしろ(小)の下にいる。下にいるということは、彼は俺の上にいるわけで。
「くろと、次ー!!」
俺ははなしろの手に丸いキラキラしたボールを乗っける。そして、それを聖樹につける。
聖樹には、靴下や赤い服を着た人形、綿がついてたりしていた。
そう、今月はクリスマスというコトで、準備をしているのだ。
上、下、というのは、誰が飾りをつけるかという言い争い。決してあれなことではない。
「ほら、次で最後だぞ。つけれるか?」
クリスマスツリーの最後の飾り物。それはてっぺんのお星様だった。
「んーっ!!…届かない…」
はなしろは届かないことに相当ショックだったのか、しゅんとなる。今更だが、はなしろの背ではこのツリーの飾りつけは無理があるもので、実は飾りは下に集中していたりする。
他の大人を呼んでもよかったのだが、それでははなしろが可哀想なので呼ばないでいた。
どうしたものかと考えた結果、俺は良い提案を思いつく。
「はなしろ、梯子から動くなよ」
「えっ何々?!」
はなしろは言うとおり、動かずにじっとしている。俺は、ゆっくりとはなしろの乗ってる梯子をのぼる。うち版上に乗る前にはなしろの両脇を抱え高く上げる。
二人で梯子を乗るのは危ないが、子供の体重では壊れたりはしないだろう。
「わっ!!」
「ほら、はなしろ早くしろ。疲れる」
二人とも手をいっぱいいっぱい伸ばす。
(明日は筋肉痛だな…)
なんて思ったりする。
「つけれたっ!!えっうわぁぁっ!!」
「あっ」
つけ終わったと同時に足元のバランスを崩し転落する。だか、衝撃はこなかった。下手すると、はなしろの分の重さもあると思ったのだが…。
目を開けると、俺は大きい救世主の腕の中にいた。はなしろは銀朱の中に収まっている。二人の後ろには安心したような顔をしている玄冬と花白も。
「こらっ貴様等!梯子に二人で乗って何をしている!!今回はケガがなかったからよかったものを」
「まぁまぁタイチョー落ち着いて」
「そうだよ銀朱!大人気ない。まったくこれだからいつまでも馬鹿なんだよ」
「花白……それは……」
ケンカを始めた“大人気ない二人”をほっとき、俺ははなしろに近づく。すると俺に抱きついてきた。
「こ…こわかったよー…」
泣いてるらしい。優しく頭を撫でてあげる。すると更に強く抱きしめてきた。
「ごめんな…はなしろ」
ゆるゆると頭を振った。
(気にするな――…か)
「…クリスマス、楽しみだな」
「…うん」
胸に顔をうずめたまま、嬉しそうにはなしろは頷いた。
今年も楽しくて幸せなクリスマスになりそうだ。
End