ロンリーガール.

□初めまして、
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「オリオン、ナナを知らないかい?」



「いや、知らない。朝食の後見てない、…ん?あれじゃない?」




僕がナナを探し回って、一時間。中庭で暇そうに寛ぐオリオンを見つけて声をかけた。ナナと僕が婚約者だと広まったものの、相変わらず女達は寄ってきた。本当に心の底からウザったいったらない。馬鹿ナナ。お前が居たらこんな奴等を追っ払う口実ができるのに。そんな感情が漏れていたのか化粧品の塗りたくった顔を近付け、トム、と甘ったるい声で気安く僕の嫌う名前を呼ぶ女。こいつら、死ねば良いのに。





きゃあああああああああっ!




そんな怒りを沸々煮立たせていたら、オリオンが間抜けな面をして廊下を指差した。
(失礼だぞ!リドル!)




「…リドル、ナナなんか追いかけられてない?」



「…アブラクサス先輩?」




僕はオリオンと顔を見合せると、二人で追いかけた。勿論、適当な理由で女達を追い払ってから。








****






『…ご、ごめんなさああああいっ!きゃああああっ!』



「私がどれだけ恥をかいたかっ!」




『だから!ごめんなさいっ!―べぶうっ!!…いっ、た、』



突然目の前に現れた、誰か。私は鼻を押さえて見上げた。




『り、リドルぅううっ!…と、オリオン。』



「なんだ、その温度差。」




私は、そのままリドルに抱きついた。



「なんでアブラクサス先輩に追いかけられてたんだ、ナナ。」


「…(絶対何かしたんだ。)」



『あのねオリオン、リドル…決して悪戯でやった訳じゃないの!でも呪文の練習してたら、突然アブラクサス先輩が入ってきて…魔法をかけちゃって!』



「…やっぱり。でも、部屋にアブラクサス先輩が入って来たのか?」



ううん、談話室。




「誰が人の出入りする場所で呪文を放つ奴がいる!」



「こいつ。」


私を指差すオリオン。リドルは自分の胸に居る私を見てため息をつく。




「黙れ、オリオン。なんで君ってトラブルばっかり…。」



「で、ナナ。因になんの呪文かけたの。」



リドルとは反対に楽しそうなオリオン。





『タラントアレグラ…。』




「…ぶはっ、」
「………、」



『しかもアブラクサス先輩の婚約者の前でかけちゃったよぉおおっ』



「通りで鬼の形相な訳だ。」



『慌てて、フィニートって唱えたけど…』



「けど?」



『談話室に居るスリザリンの皆も見ちゃってて。…わっわたし…殺られるっ!うわあああああっ―べぶっ!痛っ!』



「僕に抱きつきながら叫ぶな。」



「Ms.橘。」




『ひっ!…あ、アブラクサス先輩!』




「…僕のフィアンセが迷惑かけたようで。」



「…ぶはっ、…くっ、くくくっ!」




後ろにいるのは、ブラックか?アバタ―




『おっ、落ち着いて下さい!先輩!わざとじゃないんです!いや、そりゃあ私も誰かに当たったら面白いかなっ?―とか思って悪戯に扉へ向けてやったら先輩が入って、―いたたたたたっ!』




「アブラクサス先輩、どうぞ好きに。」



「すまないね、Mr.リドル。」



『あんた達!とっくに服従関係なのバレバレなん―、』



「シレンシオ」




呪文で黙らされた私。そして私はアブラクサス先輩に売られた。涙目でリドルを恨めしそうに見たら、当然だ馬鹿って顔で睨まれた。(へんっ!この裏切り者!)オリオンは笑を堪えてて、私を連れて歩き出したアブラクサス先輩に去り際頭を殴られてた。何かみんな暴力的な気がする。




(え、ていうか先輩私をどこに連れて行くきですか!!)




『っ、は!しゃ喋れ―んぐっ!いたっ!』



「黙れ。」



『あ、あ、アブラクサス先輩、神様、仏様、許して下さい!』



そしたらズンズン私を掴まえて歩く先輩がグルリと振り向いて、私を見た。でも先輩は身長が高いから必然的に私を見下ろす形になる、よって迫力満点!ひーんっ!殺され…、



「信じられない、」



『な、何がですか?』



「君が、彼の婚約者?」



『え、あ…、そうですが…。』



けどアブラクサス先輩の顔がまた更に怖くなった。さっきとは違う雰囲気、何か強い怒りが私を包む。怖くなって思わずまた馬鹿な事を言おうとしたら、スッと杖を向けられた。え?あれ?死亡フラグってやつか?




「…我が君の計画をご存じか」


『何の話ですか、』



「…やはり。なんと嘆かわしい、こんな小娘が現れぶち壊しになるとは。」



『え、ちょ、…ナルシスト風口調やめてくれませ―っ、!!』



「黙れと言ったろ、」


『この状況で無理ですよ。』


「…苛々する女だ」


『…リドルの次に苛々する男のクセに。』




けど本当に冗談言ってる場合じゃない。次は杖が首に突き付けられていた。あれ本日二度目の死亡フラグじゃないかな、うん、そうだよね、うん、絶対そうだよね。あは、あはははは。




『アブラクサス先輩』



「何だ、」



『何で、そんな世界を望むんです』



「っは、馬鹿な質問を!…こんな世界つまらないからだよ!だが、あのお方が考える世界は素晴らしい。」


アブラクサス先輩は、体をカタカタ震わせ興奮したように説明しだした。心酔、そんな言葉が私の頭に浮かぶ。そして心酔に伏せて隠された真実、この人はリドルの次に可哀想な人間なのだ。なんて嘆かわしいと彼は私に言ったけど、なんて嘆かわしいのか、彼に言い返したい。




「…っ嗚呼!恐怖に震え恐怖の余り誰もがひれ伏す!そしてその恐怖から人は本性をさらけ出すのだ、醜く穢い本当の部分をだ!…見てみたい、そんな世界を…見たいのだ!」




『……先輩、』




「…命乞いでもするか?」




『いえ、ただ…考えてたんです。』




「…なに?」



アブラクサス先輩は、顔を引き吊らせ更に私を睨み付ける。計画を聞き怯えない私に苛ついたのだろう、ぎゅっと杖を握りしめる手が視界の隅に映った。











『それで貴方の知る誰かの醜さを暴きだせるからですか。』



「―!!?」





どうやら私は、










『…それでどうするんです?』

「…貴様っ!」


『…馬鹿馬鹿しい。』








『そういうの、‘負け犬の遠吠え’って言うんです。』






本日三度目の死亡フラグを立てたようだ。























****
だってそんなのただの弱さじゃないの

























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