V

□HeidenrÖslein
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俺は見つけた
野原で小さく咲くばらを

一人ぽつんと儚げに咲く




Heidenr slein








ビルが立ち並び、多くの人が行き来するこの場所
そんな雑踏の中でひと際目立つ儚げな君


君を一目見て
すぐにこころ奪われた



朝のように美しい
しかし、凛とした面持ちをしている
俺は彼女に近寄り、目の前に立ってじぃっと見つめる
彼女は動じずに凛としている


君には似合わない、こんな場所




俺は言った

「君が欲しい」



彼女は言った

「そうしたらあなたを刺すよ
だってここにいたいから」





そんな彼女の言葉を無視して
俺は手首をつかんでこの場所から引き離す
雑踏の中、俺たちはスローモーションのように走る

彼女は身を守ろうと俺を刺す


彼女のはなつ「いたい」も「ああ」も無駄だった
結局連れられてしまったのだから




しかし、ふと振り返ると彼女の姿はなかった


手には赤いばら
そしてばらのとげが刺さり、手のひらから血が流れていた




ばら ばら 赤いばら
野に咲く ばら




END
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