みじかひ夢
□ベルサイユのイノセンジャーU
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グリーン将軍は、今は亡き妻の肖像画の前でぼたぼた涙を流していた。
「エリアデイル・・・。私達の可愛い娘がとうとう、ブラックの毒牙にかかってしまったであるぅ・・・!!」
肖像画の中で美しく微笑む女性。つり気味の綺麗な瞳に、艶やかな金髪。少し気の強かった妻がまだ生きていたなら或いは、ブラックを止められたのだろうか?
もともと、グリーン将軍もブラックは危ないと思っていた。特にホワイトが4、5歳の頃、彼に貰ったという花を大事そうに持ってきて、嬉しそうに、「お父さま、わたしブラックのよめになります」と宣言したときから。
だが幸い、ホワイトは嫁の意味をまだ理解しておらず、そのうち忘れてしまったようなので、少しは安全と思っていたのに。
「あの小僧、ずっと、ずっと狙ってたである・・・!屋敷の仕事そっちのけで、いつもホワイトの護衛ばかりして・・・!」
今朝、乳母が大慌てでグリーンの寝室へ駆け込んできたのだ。
「大変です旦那様、ブラックがホワイトお嬢様の寝室に・・・!」
「ブ、ブラックはホワイトと兄妹みたいなものであるから、きっと夜話などしていてそのまま・・・」
狼狽しまくりながらも、淡い希望を持っていた将軍の言葉は、乳母の報告で次の瞬間砕け散った。
「いえ、あの、同じ寝台で寝ている様子でございます」
「!!!」
やられた!
ブラック以外の男と見合いさせようにも邪魔をされ、先日縁談を進めていたレッドーラビ少佐も、どうやら行方知れず。そんな八方塞がりの状態で、ホワイトを無理矢理・・・!
「ああぁ・・・!きっとブラックに無理やり襲われたである!あの男!血を抜いて串刺しにしてくれる!!」
「いいえ、実はサイドテーブルに結婚届らしきものと、指輪が・・・」
「け、結婚届だと!?」
「はい、既に二人は署名しております」
「何だと?!!そんなの・・・嘘である!」
「ここはもう、思い切って認めておしまいなさいまし、旦那様」
味方だと思っていた乳母まで、実はブラック応援組だったのだ・・・。グリーン将軍はショックのあまり呆然としたまましばらく動けなかった。