乾 貞治

□切実な軽口
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「……なら、良かったのになァ」






ちいさく呟いたコトバが彼に届かなかったとゆうことは
神様がお前にはあげない、
って言ってる証拠。















「ねぇ、いぬい〜」


わざと猫なで声で見上げる私は
貴方にどう映るかな?



頭のいい貴方のことだから、
きっとこんなしたたかさは見透かされてる
それでも私、


「勉強教えてよ。
アタシ、頭悪いからァ」


4時間目に返されたテストを見れるように掲げれば、乾は少し困ったように笑って。


「そういう事は彼氏に頼んでみればいいんじゃないかな」


なんて
ツマラナイ返答で軽くスルー。





多分さ、
乾はこんな茶髪で睫毛くりんの唇ぷるんのカワイコちゃんとかタイプじゃないんだろうね。

ホラ、あそこに座ってる委員長。

みつあみとかしちゃってるああゆう優等生が好きなんでしょ?そうでしょ?




私はね、

そうゆう乾が好きだな。











「ケチー。
乾に教えて欲しいのに〜」


…第一、アイツに頼んだところで無理無理、
アイツ、アタシよりバカだもん。

バカでアホで、
そんで浮気者なんだから。





「乾の彼女になったら頭良くなるかなァ〜」

「はは、それは思わぬオプションだな」


あ。笑った。
乾が笑った。
少し口角上がってんの。

かーぁいい。





「どーしてもダメ?
数学だけでいーから。ね?ちょっとだけでもこのとーり!」

「うーん」

「あ!じゃ、交換条件。
アタシ丸井の好きな女のコのタイプ知ってる。それ教える」

「ん……」


お?眉毛動いた。
ここにきて幼なじみが使えるとは。


「ね、ね?ほら!データデータ!」


ちなみに丸井は茶髪で睫毛くりんで唇ぷるんが大好きなおバカさんなのだが。

この時ばかりは、あの赤頭のお隣サンだったことに感謝出来そうよ。


じゃあ数学だけ、とメガネを持ち上げる仕草すら、
見惚れてしまいそうだ。





「やったァ!
乾、アタシ乾のことスキだよ」

「それはどうも」

「や、ちがくて。そうゆうスキじゃなくて!」

「ハハ」

「ちぇー。なんだよ〜その反応」



ホントだよ?
ホントにそうなんだよ?








乾が彼氏なら、良かったのになァ。









切実な軽口




(あとさ、)
(なに?)
(君、頭悪くないよ)
(…ふふ、意地悪〜)


(でもきっと、
一生手に入りゃしないんだろうね)


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