柳 蓮二
□二番目のエゴイズム
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アンフェア、というドラマが流行ったのは何時だったか。
そう、世の中にはフェアなことなんて只のひとつもないってこと、この歳にして実感してる今日この頃。
目の前で静かに本を読むこの人だって、今でこそ私と数センチの距離にいるけれど、
この距離がいつ、どれだけ離れてしまうかなんて神様次第。
…“神様”か。
ハハ、都合良く持ち出してはみたものの、好きでこの運命をなぞらえてるのは外でもないこの私だ。
2人でいることの淋しさが1人の其れよりも大きなものだってことが、如何にこの人生をすれたものにしているんだろう。
私を、私だけをアイしてくれる誰かは
この地球上にまだきっと沢山いる。
でも、だからって、そのヒトと巡り合う術を持たないちっぽけな人間には、
僅かな生活の中でしか生きられないのだから。
ねぇ、抗うだけ無駄ってものでしょう?
「…蓮二、」
こっちを向いて。
うぅん、向かないで。
私がこんなにも貴方のことに思考を巡らしているのに、何も知らない貴方の顔なんて見たくもない。
「どうした?…泣いて、いるのか?」
抱き締めて。
だめ、抱き締めないで。
その優しさは嘘、だと知っているから、その腕がいずれ離されるのならば、ひとときの幸せなんていらない。
幸せを知った後の残酷さを解っているのなら、いっそ、振り切って欲しいのに。
「…愛している」
貴方はまたそうやって、私を見えない紐で縛り付けるから、
私は、在りもしない紐を頼りに
貴方に堕ちて、ゆく。
二番目のエゴイズム
(そう、これはきっと逆らえない運命なの)
(だから私は幸せなの)
(これでいいの)
(これが、いいの)