柳 蓮二

□二番目のエゴイズム
1ページ/1ページ

アンフェア、というドラマが流行ったのは何時だったか。





そう、世の中にはフェアなことなんて只のひとつもないってこと、この歳にして実感してる今日この頃。

目の前で静かに本を読むこの人だって、今でこそ私と数センチの距離にいるけれど、
この距離がいつ、どれだけ離れてしまうかなんて神様次第。





…“神様”か。





ハハ、都合良く持ち出してはみたものの、好きでこの運命をなぞらえてるのは外でもないこの私だ。

2人でいることの淋しさが1人の其れよりも大きなものだってことが、如何にこの人生をすれたものにしているんだろう。

私を、私だけをアイしてくれる誰かは
この地球上にまだきっと沢山いる。

でも、だからって、そのヒトと巡り合う術を持たないちっぽけな人間には、
僅かな生活の中でしか生きられないのだから。

ねぇ、抗うだけ無駄ってものでしょう?





「…蓮二、」





こっちを向いて。
うぅん、向かないで。



私がこんなにも貴方のことに思考を巡らしているのに、何も知らない貴方の顔なんて見たくもない。





「どうした?…泣いて、いるのか?」





抱き締めて。
だめ、抱き締めないで。

その優しさは嘘、だと知っているから、その腕がいずれ離されるのならば、ひとときの幸せなんていらない。

幸せを知った後の残酷さを解っているのなら、いっそ、振り切って欲しいのに。




「…愛している」





貴方はまたそうやって、私を見えない紐で縛り付けるから、
私は、在りもしない紐を頼りに



貴方に堕ちて、ゆく。














二番目のエゴイズム

(そう、これはきっと逆らえない運命なの)
(だから私は幸せなの)
(これでいいの)
(これが、いいの)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ