過去crap

□10月:乾
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バカじゃないってこと、証明できて喜んでたのも束の間。


「だから薄着は良くないって言っただろう?」

「………」


あー…
オデコに当てられた貞治のてのひらが、ヒンヤリとして気持ちいい。

さっき着替えたばかりのパジャマが、また汗で身体にまとわりついてくる。


「あまり心配をかけさせないで欲しいな」

「…ゴメンナサイ。」


謝る私に、いい子だな、とあやすように頬を撫でる貞治。

いつもは「だって」とか「でも」とか、取り敢えず喰って掛かる私だけど、
(だってこの人に口で勝てたことないからくやしくって!)
…なんだか今日は素直になれる。



…イッツ病弱マジック!



「貞治」

「なんだい?」

「ぎゅーして」


突拍子もない私のおねだりは、普段からは想像しえなかったのか、貞治が目を丸くする。

…いや、実際にはメガネで目は見えないから、目を丸くしたように、見える。



…つか、
そんなに驚かなくてもいいじゃん。

だって、なんかさぁ、
弱ってる時って安心出来る相手に甘えたくなる。


言ってはみたものの、気恥ずかしくなってちょっとふざけてみる。


「…聞こえた?ハグプリーズ!」

「聞こえてます」

「風邪うつるからやなの?」

「……………」

「なによー」


もう遅いよ、この部屋に入ったんだからウイルスもらってるよ?

からかうように笑えば、


「………そうじゃなくて、」












あんまりにも君が可愛いから、
抱き締めるだけじゃやめられそうになくてね。








自室にて、季節の変わり目、10月。


(…これ以上私の熱上げないでよバカ)
(ずっと風邪ひいてたら可愛いのになぁ)
(むかつく〜)


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