過去crap
□11月:柳
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紅葉の命は短いなぁ、
人気のない公園で、枯れ木を見つめて切なくなった。
「もう冬だからな」
(!?)
私の頭の中を読んだような言葉に、驚いて柳を見る。
…やっぱりこの参謀、エスパーなんじゃないかと思う。
「寒くなるね。…ってゆか、既に寒いし」
首にぐるぐると巻いた…いや、正確には“巻かれた”マフラーは
やっぱり持ち主の匂いがして
鼻を埋めてお香のような香りで鼻腔を満たせば、
それだけであったかくなれるような気がした。
「風邪をひくなよ」
「…既にひいたかも」
「おかしいな、なんとかは風邪をひかない、とよく聞くのだが」
「…ケンカなら買うよ?」
憎まれ口を叩き合い、見つめ合い、微笑み合い、
それから彼はそっと私の手を握った。
…やっぱりこっちのがあったかいや。
思わず弛む頬は、再び埋めたマフラーで隠されてるだろうから、
調子に乗って私は言う。
「…風邪、うつしたら治るかなぁ」
…然るべき意味で取っていただければ嬉しいんですけど。うん。
「どうやって移すんだ?」
しまった、柳の方が一枚上手だったみたいだ。
公園のベンチで、初冬、11月。
(言ってみろ)
(や、その…あの、)
(知らないのか?…こうするんだ)
(あ、……………)