過去crap

□12月:乾
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正直かったるいというのが実のところ。

いか焼きや焼きそばやりんご飴の複合臭よりも
人の多さに酔いそう。


(帰りたい…!
帰ってコタツに入りたい…!)


出来ることなら、
固く繋がれた手を振りほどいてUターンしたい衝動に駆られる。


(うぅ…
私ってばつくづくインドア派だ)


そんな自分の様子を察知したのか、
右上からクスクスという笑いが聞こえた。


「なぁに笑ってんのさぁ」

「帰ってコタツに入りたいと思っている確率90%」

「…残念だけど。
100%なのよね」


解ってるなら帰ろうよ、と言い掛けた言葉を呑み込む。

貞治は今日の初詣をいやに楽しみにしていたみたいで。

再三断ったもののめげずに誘い倒されたのだから、言ったところで帰ることになるわけもなく。


「ハハ、もう少しの辛抱だよ。
ほら、もうすぐ本堂だ」


貞治が指さす先には確かに本堂があるのだろうが、
(そりゃアンタはその図体のデカさで見えるでしょうけど!)
こちらからは前の人の背中しか見えなかった。


「お参りしたらりんご飴買ってよね」


どさくさ紛れに、根拠なきペナルティ代わりのおねだりをすると、貞治は「はいはい、」と再び苦笑した。









「あ。」


「?なに」


突然思い出したかのように貞治がこちらを見る。


「じゃあ俺からも2つお願いしよう」

「2つかよ」



なんだよ何のお願い?



なんだかニタニタ気持ち悪い笑みを浮かべる彼氏は、こう続ける。


「一つ目。
お賽銭の後の願掛けは、俺と一緒の願掛けにしよう」


「いや、貞治の願掛けなんて預かり知りませんが」

「分かるだろ?」


自信満々に諭されたら、
……分かる、気がしてきた。


「照れてる。」

「照れてないしっ!」


からかう貞治の甲を、
繋がれてない方の手でつねる。


「痛てて。」

「もう一つは何よ?」


照れ隠しに、少し攻撃的な物言いになったのは置いといて。


「うん。二つ目はね…」















神社で、大晦日、12月。


(ここでキスしないかい?
君の着物姿、可愛くて、ちょっと我慢の限界だ)
(なっ…バッ…!!
椎名林檎みたいなことゆうなー!!)
(大丈夫、人が多くて見えやしないから)
(いやだ!)
(しちゃうけどね)
(…………っ)
(ご馳走様)
(………鮎の塩焼きも買ってよね)
(ハイハイ)


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