そうやってね、いつまでも簡単なキモチで乙女に触れないで欲しいなぁ。
アイツに撫でられた頭のてっぺんが、心なしかまだ熱を持ってる気がして。
勘違いな思考を振り払うようにわたしは頭を左右に振った。
「どうした?モタモタしていると、置いて行くぞ?」
少し先の曲がり角で私を呼ぶ声。
…てゆか、もう置いてってるじゃん!
「ま、待ってよ」
小走りで蓮二の元へ向かう途中、
(う、あ)
横転。
嗚呼、我ながら鈍臭い…。
立ち上がろうと手をついて目に止まったのは、膝小僧からじんわりと滲む赤。
「痛った〜い…」
「何でお前はそうなんだ…」
溜息と共に、蓮二の右手が降ってくる。
「立てるか?」
「う、うん…」
促されるままに手を掴む。
こんなにコイツの掌は大きかっただろうか?
「んしょ、っと」
「うちに寄れ。消毒しなくてはな」
「い、いいよ、うちもすぐそこだし…」
「どうせお前じゃ上手く出来ないだろう?」
…返すコトバもない。
蓮二は小さい頃から私の面倒見に慣れてる。
でも、私はもう、そんなの嫌なんだけど、な。
「…ね、蓮二」
「なんだ」
私を引き上げてくれた右手をぎゅっと握る。
「もう少しで着いちゃうけど、手ぇつないで帰ろう?」
「フ、構わないが…子供の頃のようで懐かしいな」
「……………」
「?…どうした?」
もう、知らない。
この、鈍感。
かえりみち、秋空、10月。
(幼なじみなんて、決め付けないで)