fra amico e amato
□tranquillita`
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キィ…――ン
さっきまで力んでいた相手の手からは力が抜け、剣が透き通った金属音を響かせ落ちる。
「チィッ………」
あぁ、また服が汚れちまった。
相手に付けられた傷がズキズキと痛む。
「見ろよ、また……」
「あぁ、やっぱり噂は本当だったんだな…」
「あの、剣の達人を片っ端から殺ってるって噂か?」
「ゔお゙ぉい…ジロジロ見てんじゃねぇよ…三枚におろされてぇかぁ」
「…!」
本当に忌々しい。
俺がこの手に剣を持つようになってから、あのくだらねぇマフィア学校の奴らは怯え、軽蔑し、俺を避けていった。
それでも自分で選んだ道だ。誇りを持って歩み始めた道だ。後悔はもちろん、それで寂しいとも思わない。
「スクアーロ」
「………」
それはたぶん、こいつの存在があったからこそ今の俺が成り立っているのだろう。
まだ言葉もろくに話せやしない頃から見知っている女。同じように育っていった俺達。
周りの軽蔑と恐れを合わせて俺を忌み嫌う奴らとは違う。
あいつは何の戸惑いもなく、戦いで傷ついて苦笑いする俺に笑顔を向けて治療してくれた。
俺を家族のように慕ってくれた。
今でもそれは変わらない。
「また随分とハデに怪我したね」
「見た目ほど酷くねぇよ」
「でも治療した方がいいよ。おいで。」
「………頼むぜぇ」
その笑顔に、つい先程の胸くそ悪い出来事もどうでもよくなる。
まぁ、こいつが居るからこそ、俺はどんなに傷ついても安心していられるんだろう。
甘えてるのかもしれねぇけど、な。
(きっとお前が居なかったらとうに俺は壊れていた)
080718