ご献上の品々

□空の揺り籠【2P+おまけ】
1ページ/3ページ


抜けるような青い空に、ぽっかりと浮かぶ純白の雲。

さわさわと涼しげな風に揺れる、木々の枝と葉の音。

萌えるような若草色の絨毯が敷き詰められた丘の上に、朱金の髪を持つ少年が仰向けに寝転がっていた。


大の字に寝転がる彼が見上げているのは、青い空。
翡翠の瞳に映るのは、悠々と空を行き交う鳥と雲。



「…気持ちいい……。」



ぼーっと空の移り変わりを見守っていると、いつしか一つになっていく上の瞼と下の瞼。


(このまま寝ちまおうかな……)



鼻につく草と土の香りと、陽の暖かさが余りにも心地よくて。
近くに流れるせせらぎの規則的な音にも誘われるように。


――ルークの意識は、あっという間に眠りに落ちていった。




〇〇〇〇〇〇〇〇


「――…ーク、ルーク!待たせたわね……ってあら?」


大きなバスケットを手に、足早に駆けてきたティアが見たもの。

それは、仰向けの体制で穏やかな寝息を立てて気持ち良さげに眠るルークの、あどけない寝顔だった。

どうやら待ちくたびれた挙げ句の昼寝タイムと洒落込んだらしい。


「寝てる……わね。」


アニスとの買い出し当番に思わぬ時間を取られてしまい、約束の時間に遅れたのは自分だ。
だからこそ急いでやって来てみれば、彼は呑気そうにお昼寝中。


すうすうと心地良さげなルークの規則正しい寝姿を前に、ティアは長い溜め息を付くしかなかった。


(……こうして見ていると、年齢相応に見えるわね。)


実年齢、7歳児の少年。

寝ているルークの傍に膝をつき、そよ風にそよそよと揺られている朱い髪の毛先にそっと触れてみる。

予想以上に柔らかな髪の感触に、ティアの悪戯心が刺激される。


(……呑気に寝ているルークが悪いのよ?)


もっと触りたくなって、今度は白い頬に触れてみる。

すると。


「ひえっ!?」
「きゃっ!?」


ティアのほっそりとした指先が頬に触れた途端、ルークがびくんと身体を震わせてがばっ!と起き上がってしまっていた。


「あれ……ティア…?」
「ご、ごめんなさい。驚かすつもりは無かったのだけれと……。」


上体のみを起こした体制でいるルークに、おずおずと話し掛けるティア。


「ごめん……俺寝てたんだな。」
「仕方ないわ。だってさっきまで前衛で戦って来たんですもの。疲れてたんでしょ?」


そう言って、ティアは傍らに置いたバスケットをルークに見せる。


「だからあなたにこれを作ってきたの。アニスに手伝って貰いながらだったから時間に遅くなってしまったんだけど……。」


バスケットから取り出されたのは、甘く香ばしい匂いを漂わせるきつね色に焼かれた1ホールのパイだった。


「おっ!?旨そうだな!」
「アップルパイよ。」


ティアはバスケットから取り出したケーキナイフで手際良く六等分に切り分け、ピースを紙に包む。

ひとつはルークに手渡し、もうひとつは自分の手に。


「さあ、いただきましょ。」
「ああ!いっただきまーす。」


しょりしょり。

ぱくっぱくっ。


美味しそうにアップルパイを頬張るルークの横顔に、ティアも満足気にパイを頂いていたのだった。




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ