大切な宝箱
□My Dearest【ガイアシュルク】(1P)
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──その日は、昔からの幼馴染みである彼等三人にとっても、少しばかり特別な一日なのである。
【My Dearest】
「ルー―ク!出来たから降りてこ―ーい!!」
「…あ、今行く――!」
二階で宿題を進めていたルークを、いつもの如くファブレ家の中に上がり込んだ、近所の幼馴染みであるガイが、階下から大きな声で呼んだ。
ルークもこれまた大声で返事をすると、その宿題をほっぽり出し、待ってましたとばかりの勢いで一階に駆け降りていく。
「そんなに慌てなくても逃げやしないって」
「へへっ、だって本当に楽しみなんだもん」
そんなルークの慌て様を階段を降りた所から見ていたガイが、クスクスと笑いながら窘めた。
ルークは顔をニヤけさせながらそう答え、ガイの後にくっついてリビングに足を踏み入れる。
「お待たせ!アッシュ」
「遅いぞ、屑が」
そうすれば、珍しく長い髪を一本に纏め、椅子に腰掛けた兄のアッシュが二人を出迎えて。
ガイはそのままアッシュの隣の椅子に座り、一方のルークは食卓を挟んで向かい側にある椅子へと腰を落ち着ける。
二人分のエプロンが隅に置かれている食卓の中央には、綺麗に飾り付けた彼等特製のチョコレートケーキが置かれていた。
「うわ…今年のケーキもまた美味しそうじゃん」
「ははっ…俺とアッシュが腕によりをかけて今回も作ったからな。ケーキの味は保証するぜ?」
「バレンタインのお返しだ。有り難く食えよ」
子供のようにキラキラと瞳を輝かせているルークの目の前で、アッシュとガイが手際よくケーキを切り分けていく。
そして、そのうちの一片を皿に移し、今か今かとそわそわして待ち受けるルークの前に置いた。
そう、今日は3月14日で、所謂ホワイトデーと呼ばれる日である。
ルークがバレンタインにアッシュとガイにチョコを贈り、ホワイトデーにその二人がお返しをするのが、いつからか彼等のお約束となっていた。
「二人ともありがとうな!!…いただきます!」
「はい、どうぞ」
ルークは一度胸の前で手を合わせると、さっそくフォークで一口分ケーキを切り取り、そのまま口の中へと頬張る。
飽きることのない絶妙な甘さのチョコレートに、ふわりとしたスポンジがまさに絶品のケーキ。
「……美味しい!」
この日、二人が協力して作ってくれる甘いチョコを使ったお菓子は、毎年種類が違うのだがいつもながら格別の味だ。
プロに近いその味に舌鼓を打ちながら、ルークが思わずそう呟けば、ガイとアッシュはどことなく嬉しそうに微笑する。
「まぁ、当たり前だな」
「そう言ってもらえれば俺達も嬉しいよ。さっ、まだ残ってるからな」
「うん!」
口元を綻ばせながらそう告げる二人は、ルークに喜んでもらえたからか、誇らしげでもあって。
普段の食事の時より早いペースでケーキを食べていくルークを、柔らかい笑みを浮かべて見守る。
「──ごちそうさまです。すごい上手かった!」
「…相変わらず、この時だけは食うの早いな」
「満足出来たかい?」
「それはもちろん!今日は本当にありがとう!」
やがて、黙々とケーキを平らげたルークが、笑顔でそう言ってぺこりと頭を下げれば、アッシュとガイもまたニッと笑んで「どういたしまして」と声を揃えて答えた。
そうして、甘い甘い彼等の一時は、あっという間に過ぎていくのだった。
(──大好きな貴方へ、沢山の真心を込めて!)
end
→管理人から作者様へお礼文