大切な宝箱

□星の光【イオン+ルーク&PTメンバー】(2P+おまけ)
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夜の草原を駆け抜ける一陣の風。
ひんやりと頬を撫で、ふわりと髪を掠う夜風は優しく、心地良かった。


ルークは野営地を離れ一人で夜風を当たりに来ていた。
一人で考えたい時はこうしてたまに夜風を当たりに出歩く。
夜が奏でるハーモニーを聞くと自然と心が澄んでくるような気がするからだ。


空を見上げれば満天の星。
一つ一つが己を主張するかのように光り、瞬き、囁くように、歌うように輝いていた。



「綺麗だな…」


空に手を伸ばせは届きそうなのに届かない。
届くはずはない。

けれど分かっていても手を伸ばしてしまうのは、あの輝く星が羨ましいくらいに美しいから。
あの月が照らしてくれる白銀の光りが欲しいと心が希求するから。




空に見惚れていると、サクサクと草を踏む足音が背後からした。


「…ルーク?」


名を呼んでくれたのは、まだ少年特有の幼さが残る優しい声音。

「イオン…。」


ルークが振り返ればイオンはクスリ、と淡く微笑んだ。
まるであの星のように。


「どうしたんですか?
こんな時間に…」


少しだけ心配させてしまったらしく、イオンは微笑みながらも憂色を漂わせていた。


「星を見てたんだ…」

もう一度、自分の遥か高くに光り続ける無数の星を見上げた。
今度は一人ではなく、イオンと一緒に。


「綺麗ですね…。
夜にしか見せない空の本当の姿…。」

「すっげぇよな…。
あんなに綺麗に光り続けられるなんてさ。
…綺麗で…、輝いてて…、何だか少しだけ泣きたくなる…」


自分には月と星の光りは眩しすぎて…。消されてしまいそうで。
光りを望むのに、照らされるのは何だか怖くて。
憧れて、羨ましくて、少しだけ泣きたい気持ちになってしまう。

そんなルークの気持ちをイオンは敏感に感じ取ったのか、ルークの顔をしばらく見たあと、再び空に視線を移し、そして静かに沈黙を破った。


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