短編作品集@
□たとえ消えてなくなっても【2P】
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「……イオン……」
腕から空に飛び立った光の粒子の跡に遺されていた小さな譜石を、ルークは懐からそっと取り出した。
あの時愛する者を喪った悔恨で肩を震わせている朱金色の少年の掌に乗っていたその譜石は、微かな燐光とほんのりとした温もりを残していた。
(──イオン。俺もあんたの事、大好きだったよ)
こんなどうしようもない傍若無人な俺を優しい人だと笑って言ってくれたのが、イオンだった。
最初は変わった奴だなって思ってたけれど、いつしかその大らかな優しさに俺も惹かれていったんだ。
屋敷から出た俺が初めて好きになった人。憧れた人。
そのイオンはもう消えてしまったけれど、イオンの温かい言葉はこの胸に確かに残っている。
『ルーク、あなたは確かにアッシュのレプリカですが、あなたはあなたです。それにあなたに助けられて感謝している人だって沢山います。どうかそれだけは忘れないで下さい』
自分のこれからに悩んでいる時に掛けてくれたイオンからのこの言葉は、きっと生涯忘れることはないだろうとルークは強く思う。
たとえこの身が今、消えてなくなろうともだ。
「……イオン…ありがとう。ごめんな…」
だが立ち止まってはいられない。
悲しんでばかりでもいられない。
譜石を手にルークは立ち上がり、自責の念に駆られ独り泣いているであろうアニスを探しに部屋を後にした。
なあ、イオン。
生命を懸けてまで遺してくれたあの言葉を、一筋の希望を決して無駄にしないよう精一杯頑張るから。
だから、これからも見守っていてくれよな。
イオン。
俺に光という道しるべをくれた、もうひとりの俺の師匠。
俺が今でも大好きな、ひと。
たとえ消えてなくなっても
〜もしも生まれ変われたのなら、今度は平和な時代に生まれ、笑いあいたい〜
おわり
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あとがき
第三会聖焔祭様に慎んで捧げさせて頂きます、イオルクザレッホ火山前後のお話でございます。
聖焔祭という素敵な企画に参加させて下さいました主催の千鳥薙様や共催の桂木征也様、参加されている方々に感謝の意を捧げます!
ルークの事を最期まで何かと気に掛けてくれたイオン。
ルークの本質を誰よりもいち早く見抜いていたイオン。
そんな彼がルークへと最期に遺したものは一筋の希望であり、またある意味絶望でもありました。
本当にこの二人にはゲーム本編の最後まで共に生き抜いて、幸せな未来を築いて欲しかったです…(号泣)
暗いお話で申し訳ありません。
それでは改めまして最後までの閲覧、ありがとうございました!!
2008.12.08 完成
ミンナ勇 拝