お題で習作置き場
□何気ない日常で10のお題
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03.自転車に乗って(ゲームR&S:ユウハル)
リーグチャンピオンのダイゴさんを倒し、ポケモンリーグを制したあたし。
もうここには用もないので、心配して来てくれたユウキ君と帰ることにした。
ミナモまで「そらをとぶ」で向かい、そこから自転車に乗ってミシロに帰ろうと二人で決めて。
ちなみに、オダマキ博士は、というと。
ダイゴさんの好意で、彼の持つポケモンを特別に見せてもらうということで、別行動。
そしてあたしたちは今、ミナモを出て、自転車にて走行中なのだ。
「博士、嬉しそうだったね」
「気持ちは分かるけどね。――何たって、メタグロスなんて希少なポケモン見られるんだし」
「そんなに珍しいの?」
「そりゃあそうさ。存在は確認されているのに、その生態についてはほとんど解明されていないって代物だもんな」
「確かに強かったけどね」
希少、と言われても、さしたる興味が湧かないあたしには、オダマキ博士の興奮具合は理解不可能だったけど。
「ユウキ君は、いいの?」
「ああ。父さんのレポート見れば分かることだし、それよりもハルカと話、したくってさ」
「あたしと……?」
その問いに、うん、と頷いたユウキ君は。
「ハルカがポケモンリーグに挑戦するって知って、追いかけた行く先行く先で、何度もハルカのこと聞かされたんだ。『強い女の子がいる』って。それ聞いて、自分のことのように嬉しくて、わくわくしたよ」
「………」
どこか沈んだ声に、黙り込む。
「でも、ハルカがダイゴさんに勝って、チャンピオンになって。追っかけてきたおれにダイゴさんが言っただろ?『ここまで上がってこれたということは、君は四天王に勝ったんだね。なら君には、新しいチャンピオンと戦う権利がある訳だけど――どうする?』って」
すう、とあたしの横をすり抜け、ユウキ君の背中しか見えなくなる。
「おかしいよな。おれ、ハルカに助言するためだけにあそこへ行ったのに、そう言われて一瞬、『戦ってみたい!』って思ったよ」
「おかしくなんてないよ! ポケモンリーグは、トレーナーの憧れだもん」
「トレーナー、か」
まだそんな思いが残ってたんだな、と続けるユウキ君に。
あたしは、なんと言えばいいのか分からなかった。
一言:ウチのユウキ君は、一年前にジムをすべて回り切っている設定です。