お題で習作置き場

□恋愛的お題 ■love
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■ あまい甘い

愛して欲しいの?愛せばいいの?(ユウキ視点)

 草葉での擦過傷より暑さのほうがキツイ、とばかりに、ジャンプスーツの上を脱いで、腰に巻いた状態のおれが、
 「あれ? ミツル君。珍しいな、こんなところに来るなんて」
 草を掻き分けてきたミツル君を見つけ、そう言った。
 「ふう。こんな奥地まで来てるなんて――さすがユウキ君だね」
 「え? おれに用事だったの? だったらポケナビででも、」
 「何度もポケナビに、連絡入れたんだけどね。ぜんぜん気づいてもらえなかったから、しょうがなく来たんだよ」
 「あっ!! ご、ごめん。つい夢中になっちゃって……」
 「ハルカさんへの毎日のラブコールは忘れないのに?」
 「ら、ラブコールとか言うなーーーーっ!」
 「何でラブコールじゃいけないの?」
 恥ずかしさに思わず叫んだおれの声に、ミツル君の、いかにも邪気などありません、と言わんばかりの声がかぶった。
 「だって、ユウキ君とハルカさん、婚約してる仲じゃない」
 「そ、そうだけど……」
 それは事実だけど、友達にあからさまに言われるのは、予想以上に――恥ずい!
 「だけど、一日の報告してるだけだし。そ、そんな、ラブコールなんて」
 「甘いよ! ユウキ君!!!」
 突然、ミツル君が身を乗り出してきて、思わず二・三歩、後退りしてしまった。
 いや! それっくらいの迫力だったんだって! ……って、いったい誰に言い訳してんだよ、おれ。
 「あ、甘いって……?」
 「ユウキ君、彼女が実はモテるってこと、知らない訳じゃないよね?」
 「彼女って……ハルカ?」
 「当たり前。他の女の子のことユウキ君に訴えても、意味ないでしょ。僕以外の人は、二人が婚約してるって知らないんだからさ。ユウキ君のいない間に――ってことも、実はあり得るんだよ?」
 ……確かに。
 ハルカ、モテるんだよなぁ。
 実はミツル君も、ハルカのこと好きだし。
 ミツル君の熱意におののきながら、でも一方で納得も出来てしまうおれ。
 「だからさ、たまにはハルカさんにホントのラブコール送ってさ、ハートをゲッチューしとかなきゃ。寂しさについ――なんてことになったら、目も当てられないよ」
 「だ、だけど……」
 「恥ずかしい、なんて言ってる場合じゃないよ。愛して欲しいの? 愛せばいいの? それだけじゃないでしょ!? ユウキ君は!」
 あまりの迫力に、おれは知らずミツル君の意見に頷いてしまった。
 「良かったぁ。絶対だからね! ユウキ君!」
 「う、うん。それは分かったけど、おれに用事って、それ?」
 「も、もちろんそれだけじゃないよ! 伝言。ダイゴさんから、『例の奴、入手できたから取りにおいで』って」
 「……そっか。ごめんな、ミツル君。メッセンジャーさせちゃって」
 「いいって、いいって。ちょうど良かったし」
 「? ちょうど良かったって???」
 「ううん。こっちの話。じゃあそろそろ帰るけど、ハルカさんへのラブコール、絶対にするんだよ」
 何か言いくるめられたような気がするけど。
 「分かったって。がんばってみるよ」

一言:ユウキとは意識上カンペキに対等なので、ミツル君にとってはハルカよりユウキのほうがずっと身近で親しく、遠慮が要らない相手。


→ 君のためならいくらでも愛の言葉を囁くよ に続く
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