お題で習作置き場
□モテ男なあなたに ５題
3ﾍﾟｰｼﾞ/6ﾍﾟｰｼﾞ
5.極上スマイル（フレイ視点）
（アスラン・ザラ。こんなに分かりやすい男だとは、思わなかったわ）
目の前で、窓に張り付いておろおろする男に、眉根を寄せた。
放課後に教室で二人っきり、という、恋愛には絶好のシチュエーションにありながら、相手がこの男ではロマンティックも何もあったものじゃない。
（ミリィが『顔だけ男』と言う訳だわ）
可愛い顔に似合わず辛らつな視点を持つ友人の言葉に、その時は理解ができなかったのだが、今では納得、の一言である。
生徒会からも各クラブからもラブコールが絶えない、文武両道のイケメン。
（なのに、何かしら。このカッコ悪さ）
窓の先に見えるのは、ある男子生徒とカガリの姿。
双子の弟であり、シスコン大魔王の名を馳せているキラの目をかすめ、果敢にも友人のカガリにアプローチをした勇者。
そんな勇者の告白タイムを覗き見しつつやきもきしているアスラン・ザラは、ただただカッコ悪い、の一言である。
（あ〜あ。この男のファン連中に、この姿見せてやりたい）
千年の恋も醒めるわね、と、一人ごちる。
見ているだけなら観賞用に一人、と、彼氏がいても思うくらいには造作のいい男だが、まあ、今のアスラン・ザラも暇つぶし程度の娯楽にはなりそうだ。
そう思いながら窓の先を見ると、どうやら勇者は振られてしまったようだ。
肩を落として去ってゆく男子生徒に、軽く同情してやりながら、ちらり、とアスラン・ザラを見やる。
ホッと、安堵の表情である。
（分かりやすすぎ！）
目の前にいるのは、本当にクールで秀麗と名高いアスラン・ザラだろうか？
あまりの情けなさに疑問がわきあがったが、それを口にするよりも先にカガリがあたしたちに気づいて、
「おーい！ フレイー、アスラーン」
ぶんぶんぶん、と大きな動作で手を振ってくる。
その姿が微笑ましくて、手を振り返す。
そして、何気なくアスラン・ザラに視線を向けると、蕩けそうな極上スマイルでカガリに小さく手を振っている。
（……ホント、見てるほうが恥ずかしいわよ！）
心の中で、大きくつっこみを入れた。
極上スマイル end