ポケスペ短編連作
□新前ジムリーダーの日々 2
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2.マロウティーソーダの喜劇。
ポケスペ主人公ズ、全員集合の話。
ブルーの召集と、彼女のいたずら。トキワの森の現状と、トキワシティの住人とグリーンの決意。
いつもなら、万年筆が紙の上を滑る音と書類をめくる音だけが支配する、静かなトキワジムの執務室。
が、今日はそうではなかった。
「……ここは、集会場じゃないんだがな」
なぜかカントーの知り合いだけでなく、ジョウトやホウエンの知り合いも集っているサマに、ぽつり、とグリーンは呟いた。
「諦めろって。俺たちが、ブルーの召集に応じない訳ないだろ?」
と、グリーンの椅子の背もたれに身を預け、後ろから覗き込むのはレッド。
「だったら、ここじゃなくて他にも集まるところがあるだろう」
俺は仕事中なんだが、と。
デスクには、相変わらずグリーンの決裁を待つ書類が山と詰まれてい、他のメンバーが交友を暖めているさなかも、彼の手と目は止まらない。
「それこそあり得ないって。グリーン抜きで俺たちが集められるなんて、さ」
「俺の仕事を手伝ってくれるなら、歓迎しないでもないけど?」
「ははっ。俺、バトルならいっくらでも手伝うけど?」
「それでいいのか? お前、ジムリーダー志望だろう」
手痛い一言を掛けたグリーンは、首をすくめるレッドに興味を失ったようで、仕事へ意識を向ける。
こうなってしまっては、グリーンの気を惹くのは不可能。
さすがオーキド博士の孫だよな、と。
博士の集中力と比べても遜色のないグリーンに、つむじ辺りから手元を見下ろしながらいたずら心が湧き上がるレッドだったが。
やった場合のグリーンの報復と。
それ以上に恐ろしい、趣味と実益を兼ねたブルーの実験という名の魔の手に、端からやる気が萎えていく。
諦めて身を引くレッドから、ブルーの視線が外される。
(ああ、助かった……!)
思わず安堵の息をついたレッドは、周囲のなまぬるい視線に気づかなかった。
→続く