ポケスペ短編連作

□新前ジムリーダーの日々 3
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3.霧雨の夜にアップルホットレモネードを。
 グリーンとイエローの話。
 おのれの能力の謎を追うためトキワシティを離れていたイエローは、ブルーの召集に帰郷し、初めてトキワの森の現状を知って愕然とする。
 しかし仲間に心配させたくないイエローは、その思いを心に秘すのだが。


 「薬」が抜けたのは、アレから一時間がたってからだった。
 自分の心をさらけ出した側も、それを見せられた側も気まずくなり、散会にしましょう、という流れに当然ながら向かう。
 仕事の残るグリーンを除き、みんながジムを出ると。
 夜を迎えた訳ではない薄暗い空と、音もなく降る霧のような雨がそこにあった。
 「これじゃあ、ホウエンに帰るのは無理かも……」
 空を見上げ、呆然とルビーは呟く。
 「そうだなァ、オレらも無理っぽい」
 と、ゴールドも苦々しい声で同意見であることを示した。
 「そらをとぶ」のポケモン技は、空を白く染める霧雨では視界が利かず、かなり危険だし。
 「なみのり」も同様だろう。
 そして正規のルートでの帰郷は、時間がかかる。
 「此処で足留め、か」
 現状と打開策を検討し、無理であることを確認してのシルバーの声に、
 「なら、ポケモンセンターで――」
 「ですけど……こんな大人数で、ポケモンセンターにお世話になるのは気が引けます」
 言いかけるイエローを、クリスタルはさえぎる。が。
 「とゆーより、グリーンのコネで割り込むんじゃない限り、気が引ける以前に無理だわ」
 ポケモンロードへの最終中継点だからねココ、と。
 利用者が多いだろう事実に言及して、ブルーはイエローの意見とクリスタルの気遣いをまとめて切る。
 「やあ、どうすればよかと……?」
 不安に瞳を揺らめかせるサファイアに、
 「アタシとレッドとイエローの家に、バラけて泊まればいいだけの話よ」
 あっさり、とブルーが言い放つ。
 「あ!」
 「そうですね!」
 「……でも俺んち、ずっと留守だったから汚いぞ?」
 納得する面々に、気まずそうにレッドが言い出ると、
 「馬鹿ね。一宿の恩って奴で、こき使っちゃえばいいのよ。それにレッドの家もイエローの家も、風入れさえしてないんでしょ? だったらこの際だし、大掃除しちゃえば? 人手だけはあるんだから」
 ブルーに言い切られて、それに当たる五人は諦めたように肩を落とした。
 そんなこんなで、カントー組三人の家に泊まることが決定し。
 シルバーは(姉である)ブルーの、ゴールドとルビーはレッドの、クリスタルとサファイアはイエローの家に割り振られた。
 「じゃあ、六時ごろアタシんちに来て」
 ご飯作っとくから、と。
 レッドとイエローの家の掃除で食事までは手が回らないだろうと、ブルーはそう言い出、それに全員賛同したため、ひとまず散会となった。
 てきぱきと決められ、流れるように進められて。
 この割り振りが、薬の騒動によるぎくしゃくした関係を和らげるため、レッドとイエロー、ゴールドとシルバーとクリスタル、ルビーとサファイアという当事者同士を引き離す意図であり。
 それがブルーの気遣いだと気づいたのは、彼女をよく知るシルバーだけだった。


→続く
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