ポケスペ短編連作
□新前ジムリーダーの日々 6
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6.アリバイ作りはハイティーの時間に。
ポケスペ主人公ズと、電話越しのダイゴ氏の話。
いつ帰れるかも未定になってしまい(別に帰ってもみんなは怒らないだろうが、こちらの気がすまない)、アリバイを作ることにしたルビーとサファイア。
「何で反対するのよ!?」
「当たり前だろ! 何で姉さんが、アイツの家に泊まるんだよ!?」
珍しい姉弟ゲンカが、目の前で展開されている。
アイツ――とシルバーが指差したのは、重厚なデスクチェアーに座り、五日間でさらに溜まった書類と格闘する、(認めたくないが)姉の恋人たるオトコだった。
「だって、スイとグリーンを二人っきりにしたくないもの!」
――そうなのである。
本来ならスイは、まだ診療所で預けられている身だ。
しかしグリーン以外に対して怯えてしまうため、診療所に一人置いておくことはままならず、とはいえグリーンを診療所に留めて置くのも限界だった。
何といってもグリーンはジムリーダーであり、ある意味、街の要。
いつまでもこのような状況にあっては、やっと新しいジムリーダーが在任し街に活気が戻ったというのに、ジムリーダー不在との噂がまた立ちかねない。
ポケモン凶暴化、という爆弾を抱えるトキワシティとしては、ささいな噂の可能性にさえ過敏になってしまうのは、致し方ないことだ。
何といっても、街の衰退につながりかねない事態なのだから。
ということで、スイとグリーンが共同生活をすることは、町長とドクターとトキワ警察署長の話し合いにより、総意として決められてしまった。
様々な状況を考慮すれば、そこまでは仕方がないと考えざる得なくて。
だから、誰か保護者としてグリーンやスイと一緒に住み、その世話をするというなら、ブルーもここまで強硬な態度はとらない。
しかし、そうでなく。
グリーンとスイが一つ屋根の下で二人きり(しかもグリーンの家で!)、というのが問題なのだ。
「何だってトキワの町長は、こーゆー事態に誰も派遣しない訳!?」
「オオゴトにしたくないんだろ?」
思わず口出ししたレッドは、ギッとブルーとシルバーに睨まれた。
そればかりではなく、スイが精神的な記憶と言語の障害にかかっている、という事実を考慮すると、心を許している者以外が常に傍にいれば、それがストレスとなって病状が悪化しかねない、と医師によって確証されたからなのだが。
「だからって、姉さんじゃなくたっていいはずだろ!」
言いながら、シルバーは他の仲間たちを見回す。
双方の言い分は言い分として理解できるので、ブルーとシルバーのケンカに巻き込まれたくなくて、思わず視線を逸らしてしまう面々。
→続く