ポケスペ短編連作

□新前ジムリーダーの日々11
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11.真相追求はココアの香りに紛れて。
 グリーンとルビーおよび、レッドとゴールドの話。
 ルビーが持ち帰ってきたスイの記憶のかけらと、トキワシティに潜入した謎の男たち。


 ジムの仕事がたまっているグリーンのために、スイの買ってきたケーキを食べ終えるとすぐお暇した面々。
 あとは一人で大丈夫だから、と言われ、スイもレッドたちと共に行動する。
 が、トキワジムを出る前グリーンに、悟られないよう来いと耳打ちされたルビーは、
 「グリーンさん。来ました」
 と、言われたとおり、みんなには内緒で抜け出てきた。
 「ああ。もう終わる」
 さらさらと書類の決裁をしていたグリーンは、一枚トキワの印を押してから、ルビーの問いに答えた。
 その様子に、飲み物を用意しようと、ルビーは給湯室に入る。
 グリーンを待つ時間をもてあます訳ではないが、それでも飲み物を用意しようと思ったのは、グリーンの言葉どおりみんなのいるあの場から抜けようとした時、
 『ルビー。これあげるわ』
 すべてを見透かした青の目が、ルビーを射抜いたからだ。
 渡された袋の中身は、甘さを調節できるココアとマシュマロ。
 丁寧にココアを鍋の中で練り、牛乳を少しずつ加えて飲み物にしてゆく過程は、飲む相手のことを考える時間を与え、これを渡した人物の想いを知らしめる。
 出来上がったココアの一方には砂糖とマシュマロを、もう一方にはマシュマロのみを。
 両手にマグカップを持ち、グリーンに近づき、邪魔にならない位置に置く。
 いつもなら何事かに向かっている時のグリーンは、他の何にも気をとられる、ということがないのだが。
 ルビーは確かに、
 『ブルーの奴……』
 と、声もなく動いた唇と、その後に洩れる諦めたようなため息を見た。


→続く
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