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思い出の味 (ポケスペ:レッド中心)
「思い出の味」
かなり惹かれる言葉(フレーズ)だ。
いつもの如くトキワジムの執務室で、なぜかそちらのほうに流れていった会話を、思いっきり聞き手として頷いていた俺は、
「ねえ。レッドはどうなの?」
唐突に話を振られ、え? と声を返した。
珍しく聞き手に回っていたため、一握(ひとにぎ)りの好奇心と一撮(ひとつま)みの心配をみんなに抱かせてしまったらしい。
いっせいに視線が自分に集まったのを感じて、知らず頬に熱を帯びる。
ゴールドの、旅のさなかに作ったという、野菜たっぷりなクリームシチューの顛末や。
クリスタルの、旅の多い母親が持ち帰ってくる山桃で作るジャムと、それに添えるパンケーキ。
ルビーの、父親の好物なため、たまに家に帰って来る時には必ず母親が作り、すでに父親の帰りとイコールで結ばれているローストビーフのサンドイッチ。
サファイアの、フィールドワークついでの山菜摘みの後、みんなで作った山菜ごはんのおむすびなど。
それぞれの思い出の味が語られて、それらすべてが美味しそうで、そこに含まれた過去が温かくて。
聞いているだけで、楽しかったから。
その空気を壊したくなくて、俺はうーん、と考えて。
「ポトフ、かなぁ」
「ポトフ?」
「そう。山で遭難しかけて、やべー死にそうって思った時、山小屋のじいさんに助けられてご馳走になったんだよ。それがすっごく美味くってな。あれ以上の味にめぐり合えたことないよ、俺」
しみじみと口にした言葉に、なぜか全員、頭を抱えていた。
「……馬鹿だろ、お前」
「失礼だぞ! グリーン」
「さすがにアタシも否定できないわぁ、レッド」
だってそれ、ポトフが美味しかったからじゃなくて、生きてるって実感に感動したからだもの。
さらり、と言われた言葉に、じわじわと恥ずかしさのようなものが湧き上がってきた。
一言:レッドって、危機感足りないっぽいのでこんな話に。