文章置き場
□キリ番リクエスト掌編
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番外α 乙女心はスパークリングレモンティーのように(13.カフェ・ロマーノは恋の味。続編?)
それぞれトキワジムを離れ、遊びに行った次の日。
レッドを除く面々が、再びトキワジムに集まった。
「わあ。スゴイったいねー」
「ホントだな。スイって絵、巧(うま)かったんだぁ」
「良く描けてますねー」
絵を見つめるルビーの後ろから覗き込んでいたサファイア、ゴールド、イエローが感嘆の声を上げる。
わら半紙に、ペンで描かれたらくがきに過ぎない代物のはずなのに、シルバーとウインディをモデルとして描かれたスイの絵は、強弱をつけたラインが見事な陰影を浮かび上がらせ、陽だまりに眠るその姿を芸術の域まで高めていた。
「そんな風に言われると、何だか照れます」
はにかむスイの顔は、同時にとても嬉しそうだ。
「だからグリーンさんは、わたしたちにあんな頼みごとを……」
「そうみたいね」
クリスタルの言葉に頷いて、ぽん、とスイにブルーが手渡したのは、文房具を取り扱う店舗の大振りなペーパーバッグだ。
「これは……?」
「開けてごらんなさい」
「は、はい」
ブルーに勧められて、ペーパーバックを開けて。
スイは、目を瞠(みは)った。
「これは!」
「画材、だな」
驚きの声を上げるスイに、隣から覗き込んだシルバーが、するでもなく補足する。
そこには、水彩紙(すいさいし)のスケッチブックと水彩色鉛筆(すいさいいろえんぴつ)60色組、そしてそれに類する細々とした画材が入っていた。
「画材は良く分かんないから、適当に見繕(みつくろ)ってもらっちゃったわ」
「で、でも……何で、これを?」
「さあ? アタシはグリーンに頼まれただけだし」
クリスタルとタマムシシティで買い物してたら、ポケギアに連絡入って、言われたとおりに買ってきただけだもの。
さらり、と続けてブルーは、アッサリとグリーンに水を向ける。
「グリーンさん……」
「迷惑だったか?」
「そんなことありません! でも、ただでさえ、いろいろご迷惑をおかけしているのに……」
「気にするな。言っただろう? 有能な秘書を手に入れられたって。だからそれは、給料代わりだと思って置けばいい」
「給料……」
「働きの割には低賃金だがな」
「そんなことないです! これなんか、3万近くしたんじゃないですか?」
水彩色鉛筆を持ち上げ、スイはその値段を口にする。
「さ、3万!?」
「こんな色鉛筆が!?」
あまりの値段に、周りがビックリするのを尻目に、
「正解だけど、よく知ってるわねースイ」
「思い出したのか?」
ブルーとグリーンは周りの様子にまったく頓着することなく、スイの言葉に訊き返す。
「……本当、ですね。私、記憶が戻ってきている……?」
戸惑いに目を揺らして、スイは呟く。
その様子を心配げに、シルバーは見守っていた。
→続く