文章置き場

□キリ番リクエスト掌編
20ページ/44ページ

番外α 乙女心はスパークリングレモンティーのように(13.カフェ・ロマーノは恋の味。続編?)



 それぞれトキワジムを離れ、遊びに行った次の日。
 レッドを除く面々が、再びトキワジムに集まった。
 「わあ。スゴイったいねー」
 「ホントだな。スイって絵、巧(うま)かったんだぁ」
 「良く描けてますねー」
 絵を見つめるルビーの後ろから覗き込んでいたサファイア、ゴールド、イエローが感嘆の声を上げる。
 わら半紙に、ペンで描かれたらくがきに過ぎない代物のはずなのに、シルバーとウインディをモデルとして描かれたスイの絵は、強弱をつけたラインが見事な陰影を浮かび上がらせ、陽だまりに眠るその姿を芸術の域まで高めていた。
 「そんな風に言われると、何だか照れます」
 はにかむスイの顔は、同時にとても嬉しそうだ。
 「だからグリーンさんは、わたしたちにあんな頼みごとを……」
 「そうみたいね」
 クリスタルの言葉に頷いて、ぽん、とスイにブルーが手渡したのは、文房具を取り扱う店舗の大振りなペーパーバッグだ。
 「これは……?」
 「開けてごらんなさい」
 「は、はい」
 ブルーに勧められて、ペーパーバックを開けて。
 スイは、目を瞠(みは)った。
 「これは!」
 「画材、だな」
 驚きの声を上げるスイに、隣から覗き込んだシルバーが、するでもなく補足する。
 そこには、水彩紙(すいさいし)のスケッチブックと水彩色鉛筆(すいさいいろえんぴつ)60色組、そしてそれに類する細々とした画材が入っていた。
 「画材は良く分かんないから、適当に見繕(みつくろ)ってもらっちゃったわ」
 「で、でも……何で、これを?」
 「さあ? アタシはグリーンに頼まれただけだし」
 クリスタルとタマムシシティで買い物してたら、ポケギアに連絡入って、言われたとおりに買ってきただけだもの。
 さらり、と続けてブルーは、アッサリとグリーンに水を向ける。
 「グリーンさん……」
 「迷惑だったか?」
 「そんなことありません! でも、ただでさえ、いろいろご迷惑をおかけしているのに……」
 「気にするな。言っただろう? 有能な秘書を手に入れられたって。だからそれは、給料代わりだと思って置けばいい」
 「給料……」
 「働きの割には低賃金だがな」
 「そんなことないです! これなんか、3万近くしたんじゃないですか?」
 水彩色鉛筆を持ち上げ、スイはその値段を口にする。
 「さ、3万!?」
 「こんな色鉛筆が!?」
 あまりの値段に、周りがビックリするのを尻目に、
 「正解だけど、よく知ってるわねースイ」
 「思い出したのか?」
 ブルーとグリーンは周りの様子にまったく頓着することなく、スイの言葉に訊き返す。
 「……本当、ですね。私、記憶が戻ってきている……?」
 戸惑いに目を揺らして、スイは呟く。
 その様子を心配げに、シルバーは見守っていた。



→続く
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ