ポケスペ短編連作

□新前ジムリーダーの日々 5
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 収拾がつかない会話を何とか手繰り寄せて、軌道修正。
 心を落ち着かせるためカフェ・オ・レに手を伸ばし、部屋に沈黙が流れたが、
 「でも実際ンところ、トイレとか風呂とかの問題もあるっすよね?」
 カフェ・オ・レのお供のプチクロワッサンをつまみながら、珍しく鋭いところを突いてくるゴールドの言葉に、グリーンと少女以外の全員が固まった。
 「そ、そうよね……」
 「そーいう時まで、グリーンとくっついてる訳にはいかないしなァ」
 戸惑い、視線を交わし合うブルーとレッド。
 「なるようになるだろう」
 「グリーンさん。でもっ!!」
 「すでに、清拭にまでつき合わされたからな。今更だ」
 ゲンナリとしているグリーンだが、その言葉は全員にとって聞き逃すことは出来ない代物だ。
 「……せいしき???」
 「お風呂に入れるほど体力や怪我が回復していない患者の体を、綺麗に拭き清めてあげることだよ」
 疑問符を飛ばすサファイアと、説明に回るルビーを除いて、だが。
 逆に、一番その言葉を聞き逃せなかったのは、もちろんこの人。
 「グリ〜〜〜ン? きちんと説明してくれないかしら?」
 にっこり、と微笑むブルーの花の顔(かんばせ)。
 なのに傍で見ていてさえ、涙が出そうなくらいに恐ろしいオーラを撒き散らしているのだ。
 それを直に向けられた過去のあるレッドとゴールドは、顔を青ざめさせる。
 「そのままの意味だ」
 だが、さすが恋人と言っていいのか、恋人として失格と評したほうがいいのか、あっさり言ってのけるグリーン。
 「頼む! ちゃんと! 事細かに! 説明してくれ〜〜〜」
 「オレからも頼んますっ!!」
 「レッドっ、ゴールドっっっ! 離せ!!」
 プレッシャーに耐え切れなくなったレッドとゴールドにすがりつかれ、ソファに体が沈み込んで逃げ場を失ったグリーンは、力尽(ちからず)くで引き剥がそうとしたが、
 「説明しろ〜〜〜」
 「説明してください〜〜〜」
 こちらも必死である。
 そのあまりに滑稽な姿と目的が果たせそうな気配に、ブルーがその怒りを収めたことに三人は気づいていない。
 そのまま、すったもんだの攻防が続いたが、
 「分かった! 話すから退け!!」
 野郎にすがりつかれる気持ち悪さに、鳥肌を立ててグリーンは叫び、抱きついた側の二人は、してやったり、の笑顔で身を引いた。
 「ナースが清拭をすると言うから病室を出ようとしたら、そこらじゅうの物を蹴散らす勢いで暴れ出したからな。仕方なく、その場に留まっただけだ」
 「じゃあ、手伝った訳じゃないのね?」
 「ああ。……ただ怖がるから、手をつないではやった」
 「清拭している間、見ていたのか?」
 「見る訳ないだろう」
 当たり前のことを訊くな、と言いたげなグリーンに、全員が安堵の息をつく。
 そんな騒動を前に、少女は自分のことが話題にのぼっていると理解しているのかいないのか、ぼんやりとそれを見ていた。



→続く
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