☆庭球歌劇部屋A☆
□肩を貸すから、寄り添って
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「夕飯、まだやろ?」
「えぇ」
「一緒に食わん??」
首を傾げるその姿は、やっぱり何よりも愛らしい。
久々に見たから余計に。
「もちろん付き合いますよ」
「そか♪」
嬉しそうに笑い、ケンケンは歩き出す。
どうやら店は決めていたようで、俺はその背中を眺めていた。
抱き締めたいけど、ここは公道だから…
「なぁ、晃二?」
「何ですか?」
前を向いたまま、ケンケンは俺に尋ねる。
何かに迷ってる。
そんな声で。
「…いや、何でもねぇ…」
「……」
「…なぁ…」
俺が黙っていると、不安そうな顔でケンケンは振り向き、上目遣いで俺を見上げる。
「やっぱり、手繋いでえぇか?」
「へ?」
「嫌なら、えぇんやけど…」
「まさか!」
慌てて手を差し出す。
それを見て、ようやく安心したように笑った。
「我儘言って、ゴメンな?」
「ケンケン?」
「ゴメン…どうしても、晃二に会いたかったんや」
そんなの…
我儘なんて言わない。
小さな小さな、甘え程度。
「…今」
「ん?」
「抱き締めたいって言ったら、抱き締めさせてくれます?」