☆庭球歌劇部屋A☆
□肩を貸すから、寄り添って
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ケンケンは驚いたように俺を見上げて、フワリと、静かに笑った。
「人もいねぇのに、断るハズないやん?」
そう言ってくれたから、俺は力いっぱいで抱き締めた。
「ケンケン…離したくない…」
「オイラも、今日は離れたくない…」
点々と続く街灯の下には、俺たち以外に見当たらない。
「何かさ、二人きりになったみたいやな…この世界に…」
「俺も今、そう思ってました」
そろそろ離れなきゃと分かっていながらも腕を緩めないのは、あまりに静かすぎるこの空間が悪い。
「俺の家、来ます?」
「…ん、そうする…」
離れたくない。
一つになれれば、幸せも楽しみも痛みも苦しみも悲しみも。
全部分け合っていられるのかな?
「早く、キスしたい」
「一回くらい、ココでしても大丈夫じゃないですか?」
「じゃあ、しろよ」
「…はい…」
余計に離れられないと思いつつ、軽く触れてしまった唇。
「ケンケン」
家まで距離はある。
だからそれまで、ずっと語っていよう。
「好き、ですよ」
「オイラも、好きだぜ?」
君が愛しくて仕方がないと。
どこにいても、いつまでも、愛していると…