☆庭球歌劇部屋A☆
□迷い猫
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今年はもう、夏祭りは行けないなぁ〜って言ってた俺に、君は嬉しそうに一枚の紙を持ってきた。
『見て見て工さん!ココならまだ行けるよ♪』
そう言って差し出された紙には、8月末の日付で"夏祭り"と書いてあった。
『この日、工さんオフでしょ?一緒に行きませんか??』
君の誘いを断るはずもなく頷いた俺に、君は最高の笑顔を見せる。
俺のためだって、すぐ分かったよ?
行きたいって言った俺の言葉を、覚えててくれたんだろ?
本当に嬉しかった…
それから数日。
待ち合わせた河原で二人、何を買うか相談しながら歩いていた。
甘い物が好きな君は綿飴やリンゴ飴を、甘い物が苦手な俺は焼きそばや焼きとうもろこしを。
だんだんと人が多くなってきて、君の足取りが重くなる。
小さな君は人混みに飲まれそうだった。
「塁斗」
だから差し出した手。
君は何度も見直して、嬉しそうに重ねてくれた。
可愛い手を強く握って、まずは君に綿飴でも買ってやろうか?
君が笑ってくれるなら、俺は何だってしてあげたい。
振り返ると君がいる。
こんな幸せ、他にはないよ…