☆庭球歌劇部屋A☆
□秋風、君に…
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「草ちゃん!おめでと〜♪」
背中からぶつかるように掛けられた言葉。
俺はついつい笑いながら振り返った。
「叫ぶなよ」
「だって早く言いたかったんやもん。電話でしか言えてへんし…」
「あ゙〜、分かったから。だからそのデカい図体で落ち込むな!」
「草ちゃん、そらないわι」
仲良い友達。
そんな境目なんかとっくに越して、俺達は今一緒にいる。
今日は俺の誕生日で、お互いに仕事や稽古があったけど、直也の誘いで待ち合わせをした。
「さ、まずは店に行こ?冷えるしな」
「ん」
こんなに人の多い外じゃあ、出来るのはたわいもない世間話。
それでも楽しいのは、直也との会話だから。
「結構待った?冷えてるやん…」
「大丈夫だって。ほら、店あそこだろ?」
心配そうに覗き込んでくる直也に苦笑いを返して、目的の店を指差す。
「そうそう♪早入ろ」
まるで自分の誕生日のように楽しそうな直也につられて、俺も自然と笑顔になっていく。
直也といる時、俺はいつもよりずっとずっと良い笑顔で笑ってると思う。
それだけ、この空間が心地良い。