☆庭球歌劇部屋A☆

□有難う、暖かな笑顔を…
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午後11時を過ぎたこの時間、住宅街に人の気配はない。

家の電気も消えかけている道を、街灯目指してトボトボと歩く。

さっき引っ掛かったことは何だったんだ?

そんなことを考えながら…


「…寒っ」


Tシャツに上着を一枚だけしか着ていないと、さすがに夜は冷える。

風邪で仕事を休むなんてしたくないのに、俺はいつも注意不足だ。


「っクシュ!」


あ、クシャミまで…

やっぱり今日は、何事も人事にしてしまうらしい。

俺は上着の前をしっかりと閉めて、早足で家へと向かった。



去年の誕生日、俺は何してた?

仕事だったのは確かだったけど、酷く楽しかった気がする。


『誕生日オメデト〜♪』


あ…

そっか。

去年は仕事仲間の皆が祝ってくれたんだ。

その中に、卓也もいた。



一つ思い出し笑いを零し、俺は家の鍵を取り出した。

楽しい思い出は、冷えた俺の身体を心から暖めてくれる。


「ただいま」


誰もいない部屋に掛ける帰宅の合図。

静かな空間に吸い込まれていく自分の声を聞きながら、電気も付けずにベットへと倒れ込んだ。

何の理由もないが、今日は少しでも早く、眠ってしまいたかった。
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