☆庭球歌劇部屋A☆
□恋に溺れる
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最近、オレは良く笑うようになった。
いろんな仕事の現場に行って、沢山の人の中にいる時、ムードメーカーだと言われるようになった。
「ココアでいい?」
目の前の簡易テーブルに置かれた甘い香り。
寒さでまだ固まっている手を解すように、オレはココアの入ったカップを包んだ。
「有難う」
オレが御礼を言うと、彼はふわりと柔らかく笑って、オレの髪を軽く撫でる。
「どういたしまして」
ココアよりも甘そうな声でそう言うのは、オレの元相方で現恋人なズッキーだ。
「何も買ってなくて、ココアだけだけど」
「十分じゃない?…ん、美味しい」
「なら良かった」
目を見てれば気持ちが分かる。
今の細くした優しい目は、嬉しいと思ってる証拠だ。
「年末にこんなゆっくり出来るなんて思わなかった。しかもズッキーと」
「俺も意外。少なくともどっちかが仕事だと思ってた」
オレの頬を優しく撫でる手は、既に暖かみを取り戻していた。
オレの大好きな手だ。
「たまにはいいね。こうやって、何もしないで過ごすのも」
「あぁ…」
ズッキーが笑うからオレも笑う。
オレが笑うと、ズッキーは軽くキスをした。