☆庭球歌劇部屋A☆
□引き寄せられるように
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初めて出会ってから、もうどれくらい経つだろう?
君は少しだけ大人になって、俺との距離を縮めてくる。
そのたびに悔しくて、そのたびに待ち遠しくて…
最初は、自分の中に現れた気持ちに素直になれなかった。
怖かった。
だから二人きりになんかなりたくなかったのに、君は俺を慕ってついてくる。
皆と一緒だったら"好き"でも何でも言えるのに…
何で二人きりだと言えないの?
「工さん♪」
君は、俺の気持ちに気付いているの?
自分が女々しくて嫌になる。
「塁斗?どうかした…」
忘れてた。
君が少しずつ大人になってたこと。
綺麗になってたこと…
「聞いてくださいよ、工さん。この前ね」
俺の名前を呼んで、楽しそうに世間話を始める塁斗は可愛い。
もう気付いてしまった自分の気持ちに、改めて直面させられた感じ。
でも最初みたいに罪悪感とか嫌悪感とかはない。
「なんか嬉しそうだねぇ」
「え、だって…」
思ったまま、笑いながら塁斗に尋ねると、塁斗は当たり前のように微笑んだ。
「工さんと話すと、同じ話が倍楽しくなるんですよ♪」
幼さの残る笑顔がキラキラと輝いていた。