☆庭球歌劇部屋B☆
□恋焦がれて
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賑やかな駅前を、人混みを避けながら走る。
掛けているサングラスで、世界は淡い茶色に染まっていた。
「待っとるやろな…」
待ち合わせまで後15分。
けれど確信出来ることが一つある。
君はもう、俺を待ってる。
「あ…って、雨やん!」
急に降り出した雨に、気持ちは更に焦り出す。
ヤバいヤバいって、警報が鳴り響く。
「いた!」
いつもの待ち合わせ場所。
降り出した雨に気を取られているのか、空を見上げる鯨ちゃんを見つけた。
「鯨ちゃん!」
「あ、荒やん!早かったね」
「まぁ…って、濡れてるやん!!」
俺を見つけてフワリと笑う君は可愛いけど、風邪ひかれちゃ困るし。
会って早々で悪いけど、俺は鯨ちゃんの腕を取って走り出した。
とりあえず屋根のあるトコ…
「荒やん、どこに行くんです?」
「濡れんトコ」
不思議そうに尋ねてきた鯨ちゃんにそう答えると、目についたコンビニへ駆け込む。
幸い、ほとんど濡れてはいなかった。
「鯨ちゃん、雨降り出したら場所変えてもえぇからな?」
「だってもうすぐ荒やん来るって思ったし、待ち合わせ場所はあそこな訳だし…」
「律儀やなぁ」