☆庭球部屋☆
□背伸びして見る景色
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◎観月side◎
チラリと横を見ると、毎回見えるのはヨレヨレの襟と焼けた首筋。
少し視線を上げると、曇りなく真っ直ぐに見つめる瞳と、僕が喜ぶ言葉を呟く口。
たまに白い歯を見せて子供のように笑うと、なぜかドキッと胸が高鳴る。
あなたの瞳が僕を見ていない時、いったい何処を見ているの?
力強く光る瞳に、いったい何を映しているの?
「赤澤…」
「ん?どうした?」
あなただけが見ているなんてズルイ。
僕だけが見れないなんて寂しい。
僕が立ち止まると、当たり前のように赤澤も止まる。
「観月?」
「ちょっとコッチに来てください」
手招きした先は、綺麗な紫陽花が咲く花壇。
僕は赤澤の肩に手を置き、花壇を形どる煉瓦に乗った。
しかしまだ足りない。
「なんだよ観月…?」
「いいから黙ってなさい」
残りの距離を背伸びして縮める。
フラフラとバランスを崩す僕を、赤澤の大きくて熱い手が支えた。
「何がしたいんだよ…危ないだろ?」
そう言う赤澤と視線を合わせる。
同じ高さから見た赤澤の瞳の中には、僕しか映っていなかった…
「そっか…」
僕はやっと気付いた。