☆庭球部屋☆
□一人じゃない!
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小さい頃、俺は一人という恐怖を覚えていた。
裕福過ぎる家庭に生まれて、傍に何でもしてくれる人が沢山いたが、俺の中はカラッポだった。
氷帝の幼稚舎で初めて樺地と出会った時、俺にはコイツが必要だと思った。
少し乱暴に傍にいることを約束させてから、一時も離れずに俺の斜め後ろをついてくる。
嬉しい時も、苛々してる時も、悲しい時も、辛い時も、楽しい時も…
「どっかに座れる場所知らねぇか?」
「ウス…もうしばらくしたら公園があります」
「じゃあソコに寄るぞ」
「ウス」
俺の傍にお前がいるから、俺は慎重に進む道を決めなくちゃならない。
お前まで道に迷わせてはいけないから。
お前が俺の傍を離れないように、俺は沢山の努力をした。
尊敬と信頼を手に入れるため…
御蔭で俺は今、氷帝という一つの集団の中でトップに立てている。
そして傍には樺地がいて、俺は心底幸せだ。
公園に着くと、手近にあったベンチへ腰掛ける。
「お前も座れ」
「ウス」
隣をポンポンと叩きながら呼ぶと、ゆっくりした動作で腰を下ろした。
俺は目を離したくなくて、瞬きすら忘れて眺める。
長い間、見つめていた…