☆庭球部屋☆
□自然、偶然、突然
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部誌を書く俺の横に、当然のように居座っている英二がいる。
昨日桃と買ったっていうお菓子を食べて、おとなしく待ってる。
そんな英二に"遅くなるから先に帰れ"なんて言えなくて。
「英二」
「ん?食べる?」
「いや、違う違う。もうちょっとだから待っててな?って」
「あぁ。もちのろん♪」
語尾に"♪"が付いたって思ったのは、きっと間違いじゃないだろう。
俺は最後の感想の欄を埋めると、筆箱を引き寄せてシャーペンと消しゴムを入れる。
それに気付いた英二が俺のカバンを差し出してくれる。
俺が受け取って支度をする間に、英二が自分の荷物を整理して鍵を掴む。
ザッと部誌を確認して、俺も英二と一緒に部室を出る。
英二が鍵を閉めて、俺の制服のポケットに入れる。
そのまま部誌を職員室に届けるために歩き出す。
この間、会話はゼロ。
「どこにする?」
「スタバ」
「フラペチーノの新作だっけ?」
「さっすが大石!」
「この前言ってたじゃない」
やっと話した会話には、主語がない。
必要ないから。
相手が何を伝えたいかなんて、俺と英二なら分かるから。
二人の間では当たり前の、自然なことなんだ。