☆庭球部屋☆
□幼い恋愛
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「えっちぜん♪」
「あ、桃先輩。チィース!」
なんて簡単な挨拶。
先を歩く背中に声を掛けると、当たり前のように俺のチャリの後ろへ乗る。
そんな越前の行動に、俺も当たり前のようにペダルを踏み込む。
「今日、乾汁出るらしいっスよ?」
「はぁ!?なんでだよ!?!?」
「昨日乾先輩が薄笑いしてましたから…」
「こ…恐ぇ〜なぁ、恐ぇ〜よι」
そんな可愛いげもない、部活や学校関連の会話。
それも当たり前になっていた。
こうやって一緒にいるだけで楽しい。
でもコイツは生意気で、いつも先輩の俺を上から見下してやがる…
それでも嫌いになれないのは、惚れた弱みかな。
あるいは仲間意識の問題。
「今日の部活も憂鬱だぜ〜ι」
「でも部活なかったら落ち込むんでしょ、桃先輩?」
「まぁな♪」
学校まで一気に下る坂道。
俺はペダルから足を離して、風と交じるように駆け降りた。
「…桃先輩」
「あ〜?」
「……いや、いいっス」
「?なんなんだよ」
越前の言葉が気になったけど、今は目の前の部活!
俺の意識はそっちへと飛んでいた。
大事な今日の行事さえ忘れて…