☆庭球部屋A☆
□暖かみのある幸せ
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鍛えた身体はそう簡単に風邪などひかなくて、"滝さんに看病してもらう"って状況にはならない。
本格的に寒くなってきて、さすがの俺も厚着になったし。
「おはよ♪」
「おはようございます、滝さん」
白い息さえ弾ませながら、滝さんは俺の腕へと自分の腕を絡ませてくる。
触れた部分だけ暖かくて、触れていない部分が切なくなる。
「寒いよねぇ」
「そうですね」
本当に寒いなんて思ってるのか疑いたくなるくらいの笑顔。
俺の赤くなった鼻に、滝さんらしい甘い髪の匂いが香った。
「部活さぁ、何時に終わる?」
「いつもと同じですよ?6時です」
「うわ〜、寒そうだね」
まるで自分のことのように肩をすくめて、校門に入りかけている芥川さんへと駆けて行った。
これで俺を暖めてくれるものはない。
明日の朝まで、また我慢だ。
「日吉!」
温もりのなくなった腕を眺めていると、滝さんが振り返って俺を呼ぶ。
「なんですか?早く校舎に入らないと、風邪ひきますよ」
幸い、校舎の中は暖房が効いている。
風邪はひかなくてすむだろう。